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2011.01.30 00:54|音楽鑑賞(主にオペラ)
 去年の秋にマリインスキーレーベルから出たパルジファルの新譜感想です。二月の来日公演に行く予定なのでCDのほうは別にいいかと思ってましたが、やはり全曲が聴いてみたくて結局買ってしまいました。歌手でお目当てなのはむろんパーペのグルネマンツですが、それ以外のキャストも結構揃っているし。

 ゲルギエフとマリインスキー管のワーグナーは、私は十年ぐらい前に日本に持ってきた「さまよえるオランダ人」(このディスクでアンフォルタスを歌っているエフゲニー・ニキーチンが主役で格好良かったです。歌はともかく。)を一度聴きにいったことがあるだけです。当時は実演鑑賞の経験もそれほどなく、オランダ人自体生の舞台は初めてだった事もあって、音楽面での印象はあまり残らずこんなものかなあという感じでした。その後に世界中で公演した指環であまりいい評判を聞かなかったこともあって、一般ではロシア人のワーグナーということで微妙にきわもの扱いされてるのかと思っていたくらいです。

 そんなわけで過剰な期待はせずに聴き始めました。・・・オケや合唱も含め、拍子抜けするくらいにまっとうというか、普通にいい演奏じゃないですか。1,3幕の場面転換の音楽をはじめ、テンポの取り方や盛り上げ方もきちんとツボを押さえています。もっとも神秘的な美しさというよりは音が作り出す流れと勢い重視で、花の乙女たちのシーンあたりもわりとあっさり流す調子なので、人によっては気に入らないかもしれませんが、私としてはこういうぐいぐい前に進んでいくタイプのパルジファルは好きな部類です。

 歌手にも大きな穴はありません。タイトルロールを歌っているゲイリー・レーマンはメトのトリスタンに急な代役で登場して以来、(この時舞台上でバランスを崩してプロンプターボックスに突っ込む騒ぎがあったとかで、名前だけ先に覚えてしまった・・)ヘルデン系でよく名前を見るようになったテノールです。声自体は結構好みだけれど、クンドリーのキスの後でいまいち覚醒した感じが出せてないことと、だんだん安全運転の一本調子になっていってしまい、最後をビシッと締められてないのが惜しいです。結局一番インパクトあったのは最初に登場したときの一声でした。ウルマーナのクンドリー、プティリンのクリングゾルも役のベテランだけあってうまいし、ニキーチンのアンフォルタスはパワフルな声のせいか心身を病んでるという雰囲気が薄れてしまうのはともかく、美声で聴き応えあります。ニキーチンは秋のバイエルンのテルラムント、来年の新国でオランダ人と、これから日本ではワーグナー尽くしですね。マイヤーのオルトルートにはなんだか迫力負けしそうなので頑張ってほしいですが。他にもティトゥレル役を歌っているアレクセイ・タノヴィツキーは前回の来日公演で「ホヴァンシチナ」に出ていたのを見て以来、ひそかに注目していた人です。出番は短いながらここでもなかなか立派な声を聴かせてくれていました。
  
(追記:公式発表はまだですが、レーマンはヘップナーの降板を受けて新しいメトの指環でジークフリートを歌うらしいです。あまり重い役専門になってしまうのもどうかなと思うけど。)

 最後になってしまいましたが、パーペのグルネマンツはほんとうに期待を裏切らない出来と感じました。一幕の長いモノローグでは語り部としての役割をきっちりこなしつつ、同時にキャラ立てもしているのが見事で、説教調でもくどくもなく、颯爽としたところさえあっていかにも歴戦の勇士という雰囲気なのがいいです。詳しい感想は実演を見るまで保留にしておきますが、とにかく二月の来日公演が楽しみです。




2011.01.25 02:31|未分類
 文化芸術系のブログと銘打っておきながら食べ物のことばっかり書いてますが、先日クリームコロッケを作ってあげた知人からお返しにスペインのお菓子をもらいました。珍しいので、最後の一個になったところで記念に記事に残しておくことにします。


SH3F01500001.jpg


見た目はスコーンみたいですけど、アーモンドの粉の焼き菓子で中はしっとりしたマジパン風なので食感はぜんぜん違います。父親は栗まんじゅうみたいと言ってましたが、そういえば案外似てるかも。あちらではクリスマスやお正月に食べる習慣だそうで(数種類合わせて干しぶどうなどと一緒に出すらしい)、イギリスのプディングを始めシュトーレン(独)、ブッシュドノエル(仏)、パネトーネ(伊)あたりは最近日本でも売っていて有名なのに、スペインのクリスマス菓子はなぜか知名度低いですね。あんまり季節感も飾り気もない地味な外見だからでしょうか。でも味は良くて、元々アーモンド好きの私は大変気に入りました。生ものではないので、袋に入れたままなら相当日持ちするそうです。

スペインのお菓子にナッツの粉を使ったものが多いのはイスラム圏の影響じゃないかと思います。親の友人にモロッコ大使館勤めの人がいるので、アフリカ諸国の大使館が合同でやるバザーに行く機会がときどきありますが、そこで売っているエジプトやモロッコのお菓子もよく似た感じですし。

ついでに今更ながら存在を忘れていたカウンターとアクセスランキングを設置してみました。人が来なさ過ぎるようだとすぐに撤去しちゃうかもしれませんが。






2011.01.11 07:17|音楽鑑賞(主にオペラ)
 新年初めてのオペラ鑑賞は新国の「トリスタン」。大野氏が指揮をするからか演目人気なのか大盛況のようで、何とかチケットは確保できたものの、こんな争奪戦は初めてでした。

 私はどちらかというとマクヴィカーの演出のほうに興味があったんですが、特に冒険はせず、まあまあ無難なつくりといったところでしょうか。今回の演出でフィーチャーされているのは闇と巨大な月(前奏曲のあいだに登り、最後の「愛の死」とともに沈む)で、ニ幕だけではなく全体を通して舞台は夜に設定されています。美しい舞台ですが同時にどこかおどろおどろしくて、最初の船は「さまよえるオランダ人」に見えたし、三幕は幕が上がったとき一瞬「賽の河原?」という雰囲気でした。ただ、水夫なのか家臣団なのか、浮いた格好の集団がやたらと跳ねまわってみせるのは何だかおかしくて、それだけどうにも場違いです。
 
 コントロールや歌手への配慮は行き届いていてそれ自体には大きな不満はないものの、この舞台とあわせるとどこか噛み合わない印象を受けてしまったのが音楽作りです。月は現世の超越や夜の世界への憧れ、登場人物を衝き動かす狂気といった様々なテーマを表しているんでしょうが、こちらの頭までそのイメージに影響されてしまったのか、月に象徴される「憑かれた」ような魔力や妖しさが音楽から今ひとつ伝わってこないことが物足りなく思えてきます。三年前、バレンボイム指揮のベルリンの来日公演を聴いたときは、NHKホールの後方にもかかわらず、音の絡みあう中にずるずる引き込まれていくような吸引力があったのですが、今回はかなりピットに近い席だったのにそうした感触もなかったし・・・ それでも、今回の上演で一番成功していたと感じたのは耽美性を強調した二幕の二重唱で、前半は繊細でしたし、後半は主役二人も流れに乗って見事に歌いきってみせました。ここでは月のかわりに満天の星が浮かびあがるのも雰囲気に合っていて、舞台と音楽がもっとも調和していたシーンだったと思います。

 グールドのトリスタンは初役とは思えないほど安定した出来で、三幕の独白シーンでテキストをそのまま歌うだけという感じになってしまったような所があったのだけが少し残念でしたが、他は感情のこもった歌唱で十分立派なトリスタンでした。2001年のミュンヘン・オペラの来日のとき、ほとんど記憶に残らないメロートだった事を考えるとずいぶん進歩したものです。(生で見たのはそのとき以来)テオリンの声は、メディア経由より劇場で聴いたほうが私には耳に心地よく感じます。バイロイトの録音では愛の死がいつもややヒステリックに感じたんですが、今度の舞台では最後血のように赤い月をバックに、同じ色の衣装で歌うイゾルデは情念のかたまりのようで、どこか恨めしげにも感じてしまい、あまり違和感がありませんでした。(ちなみにこのホラーチックな幕切れ、私は結構好きです。)主人カップルに比べ、クルヴェナールとブランゲーネはずっと人間くさい描き方をされており、声よりキャラのほうが印象に残りました。ブランゲーネは惚れ薬のビンを機会があったら自分も使ってみたそうにためつすがめつしたり、見張りをさぼって寝てしまったりで、いかにも普通の女の子という感じです。クルヴェナールは一幕では酒壜を肩からさげてへべれけ状態ですが、三幕ではすっかり真面目に。老け作りすぎるマルケ王が表現も声のトーンもニュアンスに乏しく、いまいちだったのが残念でした。

 困ったのは二幕が始まって少ししたあたりで、客席にやたらと強い刺激臭が漂いだしたことです。私はあの種の匂いがとにかく苦手で、鼻がむずむずして仕方ありませんでした。イゾルデが灯りを消したらすぐに匂いもやんだので、十中八九あの松明が原因だったと思うんですが、いったい何を燃やしてたんでしょう?歌手やオケの皆さんは不自由しなかったんでしょうか。



新国立劇場「トリスタンとイゾルデ」2011年1月7日鑑賞

指揮 大野和士

演出 デイヴィッド・マクヴィカー

出演
 
トリスタン ステファン・グールド

マルケ王 ギド・イェンティンス

イゾルデ イレーネ・テオリン

クルヴェナール ユッカ・ラシライネン

メロート 星野淳

ブランゲーネ エレナ・ツィトコーワ 

牧童 望月哲也

舵取り 成田博之

若い船乗りの声 吉田浩之


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