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2011.02.17 16:25|音楽鑑賞(主にオペラ)
 今回のマリインスキー来日はオペラの舞台上演が二つだけ、それもロシア物ゼロというのは私にとってはいささか不満でした(何しろ国内でマイナーなロシアオペラを生で見られるほぼ唯一の機会なので)。そうは言いながらも、三幕だけの演奏会形式とはいえ「パルジファル」には嬉々として出かけていくわけですが。

 前座に「ローエングリン」一幕と三幕の前奏曲と「タンホイザー」の序曲、休憩をはさんでから「パルジファル」というプログラムです。今回もマリインスキーの公演にはつきもののキャスト変更で、アンフォルタス役が直前まで予定されていたヴァネーエフから「影のない女」のバラク役、エデム・ウメーロフになっていました。この人は少し前にネトラジで放送された「ボリス・ゴドゥノフ」で題名役を歌った録音を聴いていたせいで名前と声だけ覚えていたんですが、これも何かの縁かもしれません。

 ローエングリンの一幕前奏曲は一本ぴんと筋の通ったような流れがあって美しかったし、タンホイザー序曲はヴェーヌスベルクの音楽が誘惑的というにはやや荒っぽく感じたものの迫力十分の演奏でした。ただ、これは隅のほうに座ってしまったせいもあるのか、パルジファルの演奏も含めて音の伸びがあまりなく、録音で聴くのとは違ってときおり弦と管のアンバランスが目立っていた印象です。けちらないでもっと上のランクの席を買っておけば良かったかも。

 パルジファル、そういう訳で音楽にこちらの気分が乗るまでにいくらか時間がかかってしまったのですが、やはり話が展開してゆくごとにぐいぐいと引き込まれます。グルネマンツを歌うパーペの語り口は知的で切れ味鋭く説得力抜群で、ぜひ実際に舞台で演じているのを見てみたいです。(来々シーズンメトでやるそうなので、HDにかけてくれれば・・ちなみに共演予定はカウフマンとペーター・マッティだとか。)近年声にボリュームがなくなってきた気もするけれど、巨人からより繊細な等身大の人間になったという感じで、むしろこの役には合ってきたかもしれません。パルジファル役のセルゲイ・セミシュクールは昨日のトロイ人と掛け持ちしたのが原因か、パワー不足気味なのが目立ってしまっていました。それにドイツ語のイントネーションも素人耳にもいまいちで、聖杯王になるにはなんとも頼りない感じです。それでもところどころ綺麗な声を聞かせてくれたので、まだこれからの人なんだろうとは思いますが。ウメーロフも声はよく通るけれど、やはりドイツ語がちょっと。合唱はとても良く、特にラストシーンではそれまでの聖杯騎士たちの圧迫感からがらりと変わって、神秘的な異空間を創るかのような雰囲気がありました。

 ゲルギエフはオケをコントロールしてきっちり全体の流れを構成していたと思いますが、なぜか個人的には癒しをもたらすというより、音楽に含まれる苦痛や悩みの部分がより際立たせられて耳に残ってしまいました。もちろんそういう解釈の演奏が悪いわけではないですし、こちらの聴き方がだんだん変わってきたのが大きいのでしょうが。
 
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