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2012.07.29 22:18|読書感想
 これまで本やCDのたぐいを表紙やジャケット目当てで買ったことのなかった私がついにその禁を破ってしまいました

なぜかって表紙のオルドウィン君(でもハチワレ入りって黒猫か?)がうちの黒白にそっくりなので↓。似てません?

黒猫オルドウィンの冒険 三びきの魔法使い、旅に出る黒猫オルドウィンの冒険 三びきの魔法使い、旅に出る
(2010/11/09)
アダム・ジェイ・エプスタイン、アンドリュー・ジェイコブスン 他

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うちの猫のほうがちょっと白いところ多いですけどね。でも背中側から見るとほぼ真っ黒なので、こっちの続編のイラストのほうが似てるかも。

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 下手な写真だとはっきりしませんけど実物はもっとそっくりで、顔の形とかしっぽとかまんまなんです――って、もう本の紹介か猫自慢かどっちかわかりませんが 猫バカ。

 お話はオルドウィンたち表紙の二匹と一羽が、ある魔法使いの使い魔として繰り広げる大冒険なんだとか。あらすじだけ見てもなかなか面白そう(実は好きな小説十作挙げるとしたら、動物主人公の話が確実二つは入るくらい動物もの好きです)  まだ手元に届いてませんがいずれ感想も。

テーマ:本の紹介
ジャンル:学問・文化・芸術

2012.07.25 18:43|怪奇幻想文学いろいろ
 夏といえば幽霊、それに今日からバイロイト(なんか開幕前からアレな騒動になってしまってますが)ということで、たまにはちょっと違う雰囲気の作品についてでも書こうかと思います。

 アメリカの詩人エズラ・パウンドの初期の作品に「トリスタンとイゾルデ」伝説を題材にした戯曲があります。以前パウンドの詩のクラスでレポートを書かされたときに存在を知り、参考文献を漁ってみたりしたものの肝心のテキストが見つからずじまいだったのですが、最近調べたらその作品「トリスタン」Tristan Plays Modelled on the Noh というパウンドの戯曲集に収録されていることが判明。国内では入手しにくいようですが米アマゾンですぐ買えました。
 
 そもそも中世の恋愛ロマンス自体はあんまり得意じゃない私が何で惹かれたかというと、この劇がまんま日本の夢幻能をモデルにした一種のゴースト・ストーリーだからです。(←結局そこに行き着く)
 もともと漢詩や俳句など東洋の文芸に関心があったパウンドは、明治の「お雇い外国人」として有名なアーネスト・フェノロサの遺稿を知り合ったその未亡人から譲られ、中に含まれていた能楽の研究と訳を元に、自分なりの英訳作品をいくつも完成させます。
 それだけでなく、当時住んでいたロンドンで観たビーチャム指揮の「トリスタンとイゾルデ」に触発され、この中世伝説を夢幻能の形式に翻案した戯曲まで書いてしまいました(あくまで習作的なものだったらしく、実際に上演はされませんでしたが)。

 舞台はコーンウォールのマーク(マルケ)王の城の廃墟で、すでにトリスタンとイゾルデの悲恋物語も遠い昔の出来事となった時代のこと。 
 時は三月、その城跡を訪れたフランス人の若い彫刻家。すると荒れ果てた建物から一人の女が現れ、ここは立ち入ってはいけない場所だと咎めるので彼はこう答えます。

Sculptor :...I came to see a quince tree. I read about it in a book. It comes out in March before the other trees. No, there are not a number, there is one tree, set on a capein Cornwall, and the Gulf Stream brings it out before any other tree has budded.
彫刻家:...私はマルメロの木を見にやってきました。ある本で読んだところでは、その木は三月、他の木に先立って花を開くのだとか。いや、幾本もではなくたった一本の木なのですが、コーンウォールの岬の上に立っていて、湾の潮流のおかげで他のどの木よりも早く咲くのですよ。
 

 一本の木のためはるばるフランスからいらしたなんておかしな方ですねという女に、彫刻家は自分はこの地方一帯を徒歩旅行してきたが、どうして地元の者は誰もこの場所について知らないのだろうと疑問を投げかけます。そして開花の日は毎年同じ一日だけと決まっており、それが明日なので今夜はここで野宿するつもりだとも。

 いったんは自分の所有地のこの城跡には泊められないとそっけなく応じた女でしたが、やはり気の毒だからと立ち去ろうとする彫刻家を引き止め、例の木はすぐそこだと言い残して姿を消してしまいます。

 一人になり、女の示した木を眺めつつどうも変な場所だと呟く彫刻家。
 すると不思議な光のなか、中世の衣服になった先ほどの女、実はイズー(イゾルデ)の霊が歩み出てきます。ついさっきとは違い、ほとんど彫刻家に注意を払おうともしませんでした。

 彫刻家が舞台の端にかがみこんで成り行きを見守る中、誰かを探すかのように歩き回るイゾルデのもとに現れる一人の男。むろんそれは彼女が愛したトリスタンの亡霊です。
 しかしかつての恋人たちはお互いに近づいても触れ合おうとはせず、すれ違いを繰り返しながら廃墟をめぐるばかり。そしてとりとめもなく、過ぎ去った日の記憶の断片をかわるがわる口にします。
(なお二人の姿については、"体の片面だけが金色に輝き、もう片方は灰色にくすんだ衣装をまとっていて、暗い色の側を観客に向けていると背景に溶け込んで見分けられないほど "だという指定がされています)

 ここからは筋らしい筋がないので、あんまり上手くない訳ですが二人の台詞の一節を抜き出してみました。

Yseult:...A Sea, stretched out around,       
A warm and sun-lit day, flame hid in the cup:    
Why would you put the past out of mind?    
(Tristan again seems unsatisfied with the speech)
Many a time in Marrois, in the high green of the forest,
Hid in a light lodge of boughs…

Tristan: Whose ring is that green on your hand?

Yseult: There is too much between us.

イズー:(前略)...四方にひろがる海、
 暖かく、陽光にあふれた昼、杯に隠された焔
 なぜあなたは過去を心から追いやってしまおうとしたの?
 (トリスタンはまたしても彼女の言葉に不満げな様子) 
 いくたびもモロアの森で、緑たけなわの森の中、
 枝葉が織りなす軽やかな小屋に隠されて...

トリスタン:君の手のその緑の(石のついた)指輪は誰のものだ?

イズー:私たちの間にはあまりに多くのものがありました。

 
 こんな調子で会話が成り立つ様子もなく、二人とも互いの名を呼びつつも、ときには薄れる光の中で明滅し影のようになる相手を認識さえできません。(ちなみにドイツ語風でないYseultという表記からも分かるように、この作品は基本的にワーグナーではなく古来からのトリスタン伝説に基づいていて、モロアの森、緑の石の指輪などもそちらからの引用です。)

 今の自分は風に舞う塵やヴェールのようなものだと嘆くトリスタン、すべてのことには終わりがあるというイズー。そして彼女は「私たちの間にはあまりに多くの...」と繰り返したあとで"We are neither alone, nor togather…"、さらに"I am torn between two lives/ Knowing neither..."と最後の独白を結びます。

 やがてトリスタンは、岩間に打ち寄せる波のように、心乱される自分に安らぎはないという言葉を残して退場。あとに続くイズーに、彫刻家がふとこの場所の名はと尋ねると、彼女は一言ティンタジェルと告げて消えていきました。

 われに返った彫刻家があのマルメロを見にゆくと、先ほどまでまったく咲く気配のなかった木にはいつの間にか一面の花と葉が。呆然とした彼が先刻の二人の台詞を反復し、去っていくところで幕。

 はっきり言って私も内容は完全に理解しきれてませんが(英語自体はパウンドの作品中ではわりと読みやすいほうだと思いますけど)、構成上のことだけ補足すると、彫刻家(能でいう「ワキ」に相当)がトリスタンたちの幽霊に出会うのは、伝説の主人公の霊がゆかりの地に現れて過去を語るという夢幻能の法則を踏襲しています。

 さらにパウンドはフェノロサ遺稿に含まれ、自身でも訳した能の演目「錦木」や「須磨源氏」などの要素も翻案して作中に組み込んでいて、「マルメロの木」というのも「須磨源氏」中にある桜の木がモデルのようです。
 個人的には諸星大二郎「桜の花の満開の下」という短篇の、平将門の残党の怨念が百年に一度咲かせる桜なんてのを連想してしまうんですけどね。元のトリスタン伝説は二人の墓から木が生え、切っても切っても絡みあったという後日譚で結ばれますが、決まった一日だけ咲いて散ってしまう花というのもまた恋人たちの妄執がなせる業かもしれません。

 話はより古いバージョンに基づきながらも、光と影、渦巻く海と波、その中で咲いては散る花びら (これらはパウンド好みのイメージでもありますが)といったモチーフにはやはりインスピレーションとなった楽劇との共鳴要素が豊か。 かつての恋人たちが語るとぎれとぎれの追憶も、ワーグナーの音楽と舞台を思い浮かべつつ読むと愛と死の残酷さがいっそう際立ち、なおのこと感慨深いものがありました。
 
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これがPlays Modelled on the Nohのテキスト。収録作品は「トリスタン」も含めみな短いので、本よりは小冊子といった作りですが。

西洋の夢幻能―イェイツとパウンド西洋の夢幻能―イェイツとパウンド
(1999/09)
成 恵卿

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あと作品の成立過程や影響を与えたと推測される能の演目については、テキスト全文は載ってないものの上の研究書が非常に参考になります。

 
Classic Noh Theatre of Japan (New Directions Paperbook)Classic Noh Theatre of Japan (New Directions Paperbook)
(1979/06)
Ezra Pound

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 パウンド訳の「錦木」や「須磨源氏」はこちらで。

テーマ:詩集・詩誌・詩に関する本
ジャンル:小説・文学

2012.07.21 02:06|読書感想
 一応読書の感想がメインとプロフィールに書いておきながら、まっとうな「読書感想」というのを書くのが実は苦手なのです。まあ最近図書館の書庫から引っぱり出してきたような、絶版になって久しいタイトルばかりを読んでるので、どうも紹介しづらいというのもあるんですが。

 そんな中、六月末に創元推理文庫からH・R・ウェイクフィールドの怪奇小説集が出てくれたのはうれしかったです。
 これまでウェイクフィールドのまとまった作品集というと、国書刊行会の「魔法の本棚」全六巻(以前書いたヨナス・リーの「漁師とドラウグ」なんかと同じシリーズ)中の「赤い館」だけでしたから (というか「魔法の本棚」シリーズ、作者と作品のチョイスがいいだけにもうちょっと手に入れやすければと)。
 
 ですが今度の文庫版では、国書刊行会版にあったウェイクフィールド自身のエッセイ二篇が削られてしまったものの、収録作品数は九篇から倍の十八篇に増えており、値段もハードカバーでない分安いので相当のお得感です。

ゴースト・ハント (創元推理文庫)ゴースト・ハント (創元推理文庫)
(2012/06/28)
H・R・ウェイクフィールド

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 怪奇ものではどちらかといえば分厚い長編にじっくり当たるのが好きな私ですが、ウェイクフィールドのホラー的センスのよさには、やっぱりこのジャンルには短編こそ王道だと思えてきます。
 
 主な題材は幽霊屋敷や忌み地、あるいは死者の怨念・・・などごくごく正統派の内容。きっちりした伏線や道具立ても、徹頭徹尾いかにも怪談!といった感じです。
 私としてはもうちょっと逸脱してもいいというか、読後にもやもや感が残る作風のほうが好みではありますが、似たようなテーマが並んでいても決して金太郎飴にはならず、どれもそれぞれに個性的な作品ばかりで非常に楽しめました。
 
 表題作「ゴースト・ハント」は幽霊屋敷潜入をラジオで実況中継という趣向。個人的にモチーフが興味深かったのは「見上げてごらん」、ある寒村での儀式を覗き見した少年の体験談「最初の一束」(これはちょっとクトゥルフっぽい)、インドにも姑獲女そっくりの妖怪がいるという「チャレルの谷」あたりでしょうか。

 しかし日本人にとって一番強烈なネタは、今回新訳された中の一つ「彼の者、詩人なれば・・・」に登場のゴネサラ氏かも・・・。ほんと後根皿さん(←適当に変換したらこうなった)いろんな意味で気の毒すぎます。

テーマ:本の紹介
ジャンル:学問・文化・芸術

2012.07.17 20:51|レシピ
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飾り用パセリの左側が衣にハーブを加えたもの、右側がパプリカ入りのもの

「グレン・キャリッグ号」完結記念ということで、たびたび登場してきたタコをフリットにしてみました(意味不明)。もちろん怪物巨大ダコではなく普通のタコです
ハーブとスパイスをきかせているので、おかずだけでなくビールのおつまみにもぴったりです。


材料:ゆでタコ、小麦粉、ビール(発泡酒でも)、粉末パプリカ、葉もののハーブ

ハーブはパセリ、バジル、セージ、和風がお好みなら青ジソなどなんでも可。今回はベランダのイタリアンパセリにセージをちょっとだけ混ぜて作りました。

レシピは基本、前に紹介したイカのローマ風フライのアレンジです。

下準備としてタコは7~8ミリ幅ほどに薄く切り(足先の細いところはそのまま切り離せばOK)、ハーブは細かく刻んでください。

切ったタコに軽く塩をしたあとペーパータオルで水気をふき取ってボールに入れ、ふるった薄力粉を全体によくまぶしつけます。
そこにタコが隠れるくらいの分量ビールを加えたら、天ぷらの衣くらいの固さになるまで少しずつ粉を足してといていきます。

半分を別の容器に移し、一方に粉末パプリカ、もう片方にはみじん切りにしたハーブを加えて混ぜます。あとは油でカリッと揚げれば出来上がり。

衣のパリパリ感が消えないうち、お好みでレモンを絞ってどうぞ

テーマ:レシピ大集合!
ジャンル:グルメ

タグ:スペイン料理

2012.07.16 18:30|ホジスン
 暑い中、だらだらしてるうちに「グレン・キャリッグ号のボート」最終章の記事を上げてから三週間も経ってしまいました。
 話についての感想は大体章ごとの最後にまとめていますので、本文中に書ききれなかった説明(というかほとんど言い訳)をいくつか付け足して締めくくろうと思います。

 なんとなく始めてしまった各章の内容紹介、はじめは自分が読み進めていくための手助け用メモくらいのつもりだったので、あとから読み返してみるとあらすじもだいぶポンポンと大胆に省略してました。(さすがにはしょりすぎだろと思った数箇所はあとから加筆してますが。)
 
 それでも自分がだんだん作品に入り込んでいくにつれ、一回分の記事がだんだん長くなってきてしまい、あくまで「要約」と割り切って簡潔さを優先するかどうかで迷ったあげく、結局は読んだことがない人にもできるだけ作品の筋の細部と雰囲気が伝わるよう意識するようにしました――と言っても、実際にそうできたかはいささか心もとないですけど。

 もちろん読んでくださった方はお分かりと思いますが、ブログに載せている文章は、私が自分なりに読解した内容をまとめたもので、作中の文を部分的に抜き出してそのまま訳しているわけではありません。なので、なるべく原文のニュアンスには忠実になるよう心がけたとはいうものの、原文を読まれている方なら時には細部の解釈が食い違うこともあるかとは思います。もし疑問や不明な点などあれば、なんでもお気軽にコメントしていただけると幸いです。

 (特に大弓の装置とか、帆船の船体や航海全般に関することに関してはまったくの知識不足で、百パーセント正しく説明できている自信がないです・・・。 なお後者の問題に関しては、こちらの英和海洋辞典様のサイトをずいぶんと参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申し上げたく思います。)

 ホジスンの長編の中では間延びしすぎ、ごちゃごちゃした題材の寄せ集めと、どうも駄作のレッテルを貼られているらしいこの作品なのですが、確かに「異次元を覗く家」や「ナイトランド」の幻想的壮麗さや、「幽霊海賊」の八方塞がりな圧迫感のような迫力には欠けています。
 
 大体じわじわと読者の恐怖感をつのらせていくのが「ホラー」なんでしょうけど、この作品の場合そのピークが序盤の廃船のところですから。島にたどり着いてからは難破船救出に主眼が置かれているのもあって、どうしても怖さが薄れがちです。ただいわゆる、「忘れた頃にやって来る」的なスリルはありますけどね。

 もっともそういう不満はあくまでホラー要素に対してであって、普通の冒険サバイバルものとして読めばそれなりに面白い作品には違いないです。みんなで大弓や凧を工夫しての救出作戦にはまた別の方向にわくわくさせられるし、頼もしい(すぎる)ボースンはじめ仲間思いのいい人ばかりで読後感も爽やか。
 
 良い意味で子供向きというか、どこかの出版社からジュニア向けの訳で出ていてもおかしくないような作品じゃないかとも思います。昔そういうシリーズに胸を躍らせた人、あと実はB級モンスター映画が結構好きだという人(私もその両方だけど)なら楽しめる要素たっぷりではないでしょうか。

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タグ:ウィリアム・ホープ・ホジスン

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Author:eHolly
筆不精にも関わらずメモ帳代わりとして始めてしまったブログ。
小説や音楽の感想・紹介、時には猫や植物のことも。
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