2016.03.30 02:25|読書感想|
「ねこのオーランドー」に便乗して買ったこれもイギリスの絵本。
昔どこかでぱらぱらと目を通したのが印象に残っていて手に入れたいと思ってたのですが、タイトルも作者名も分からず困っていたところ英アマゾンの関連商品リストに画像が出てきてくれたおかげでようやく思い出せました。
(画像はAmazonから)
絵本よりは画文集といったほうがふさわしいかもしれませんが、ヘレン・ブラッドレイ(Helen Bradley)というイギリス人女性が自身の幼少期を振り返って描いた絵画に、同じく彼女の筆になる回想と作品ごとの短い説明書きを添えた本です。
日本ではシリーズ四作中「ミス・カーターはいつもピンクの服」「ミス・カーターといつもいっしょに」「お茶においでになった女王さま」の三作が暮しの手帖社から出版されており(あいにく現在は絶版のよう)、他に"'In the Beginning', Said Great Aunt Jane"という題の未邦訳作もあります。置き場所に困ると思いつつ、結局日本語版と英語版ばらばらながら四冊揃えてしまいました。
ちょうど1900年生まれのブラッドレイは当時紡績業が盛んだったランカシャー州の町リースの出身で、父方母方とも比較的裕福な事業家というアッパーミドルクラスの家庭で育ったようです。題材になっているのは彼女が7歳から10歳頃までの日々の生活の一コマ一コマで、四季の行事や冠婚葬祭といったイベント、それに普段の街角や家での光景が恐るべき細かさで描き込まれています。
プロの画家のかっちりした画風とはちょっと違うものの、60年以上も後になってから描かれたとは思えないほどに生き生きした空気感が伝わってくる絵で、二十世紀はじめごろのイギリスの文化や風俗を知るにはうってつけの資料でしょう。
※ブラッドレイの公式サイト(http://www.helenbradley.co.uk/index1.htm)でもかなりの数の絵が見られますので、興味を持たれた方はまずそちらからどうぞ。右上の黄色い印"Prints"から入ってそれぞれの項をクリックしてください。
子供時代の回想とあって、話の中心となるのは一緒に過ごすことの多い母と祖母、三人の叔母さんと近所の友人知人といった人たち(ヘレンと弟は寄宿学校に行くまでは、小学校には通わず家で教育を受けていたそうなので)。 表題に出てくる「ミス・カーター」もそのうちの一人で、一家と特に親しい資産家の若い女性なのですが、タイトルどおりいつもピンクの服を着ているためすぐ見分けがつくという訳です。人が大勢いるシーンの絵ではちょっとしたウォーリーをさがせ状態になって楽しい(笑)
このミス・カーターや母親たち四姉妹は社会の流行全般に敏感な人たちだったようで、最新モードのファッション研究に熱心なのはもちろんのこと、揃って婦人参政権運動のデモ行進に繰り出したら暴言を浴びせられ、あげく肩を小突かれたミス・カーターは卒倒してしまったり…というエピソードなどはいかにも時代を感じさせます。
そういったハプニングが大抵どこかしらで起きている街中の様子もユーモラスなのですが、私がもっと興味をひかれたのは当時の女性ならあんまり大っぴらにできなかったであろうようなプライベートな場面の絵です。
たとえば「ミス・カーターといつもいっしょに」中の、避暑に持っていく夏服をまとめて洗うため(現代人からするとずいぶん優雅な話ですが、ヘレン一家やカーターさんはじめ数人の知り合いたちは毎年初夏から九月いっぱい頃まで同じランカシャー州の有名な避暑地ブラックプールで過ごすのです。仕事のある男性陣は週末だけ合流)、女性たち総出で洗濯をするシーン。「お父さんご自慢の新しいせんたく機」というのは大きめのバスタブぐらいある木の槽で、それを二人がかりでジャブジャブかき混ぜるさまは実にくたびれそう。
これと他の巻にある、暖炉で熱した焼きごてで髪をカールするところ(煙が!)に限っては、つくづく現代に生きていてよかったと思わされる光景です…。
もちろん全体としては、これほど古き良き時代の英国を感じさせてくれる本もそう多くないと思いますが。そもそもこのシリーズを入手しようと思ったのも、ほぼ同じ頃に活躍したM・R・ジェイムズやアルジャーノン・ブラックウッドといった作家たちの英国怪談を読むようになってからというもの、その登場人物の大半を占める当時のアッパーミドル層の暮らしぶりが気になりだしたからでした。そういったビジュアルを知るには、その時代を扱った映画やドラマが一番手っ取り早いのかもしれませんけど、ふだん映像作品をあまり見ない私のような人間にとっては、やっぱり紙の本をゆっくり眺めるほうが落ち着けるんですよね。
昔どこかでぱらぱらと目を通したのが印象に残っていて手に入れたいと思ってたのですが、タイトルも作者名も分からず困っていたところ英アマゾンの関連商品リストに画像が出てきてくれたおかげでようやく思い出せました。

絵本よりは画文集といったほうがふさわしいかもしれませんが、ヘレン・ブラッドレイ(Helen Bradley)というイギリス人女性が自身の幼少期を振り返って描いた絵画に、同じく彼女の筆になる回想と作品ごとの短い説明書きを添えた本です。
日本ではシリーズ四作中「ミス・カーターはいつもピンクの服」「ミス・カーターといつもいっしょに」「お茶においでになった女王さま」の三作が暮しの手帖社から出版されており(あいにく現在は絶版のよう)、他に"'In the Beginning', Said Great Aunt Jane"という題の未邦訳作もあります。置き場所に困ると思いつつ、結局日本語版と英語版ばらばらながら四冊揃えてしまいました。
ちょうど1900年生まれのブラッドレイは当時紡績業が盛んだったランカシャー州の町リースの出身で、父方母方とも比較的裕福な事業家というアッパーミドルクラスの家庭で育ったようです。題材になっているのは彼女が7歳から10歳頃までの日々の生活の一コマ一コマで、四季の行事や冠婚葬祭といったイベント、それに普段の街角や家での光景が恐るべき細かさで描き込まれています。
プロの画家のかっちりした画風とはちょっと違うものの、60年以上も後になってから描かれたとは思えないほどに生き生きした空気感が伝わってくる絵で、二十世紀はじめごろのイギリスの文化や風俗を知るにはうってつけの資料でしょう。
※ブラッドレイの公式サイト(http://www.helenbradley.co.uk/index1.htm)でもかなりの数の絵が見られますので、興味を持たれた方はまずそちらからどうぞ。右上の黄色い印"Prints"から入ってそれぞれの項をクリックしてください。
子供時代の回想とあって、話の中心となるのは一緒に過ごすことの多い母と祖母、三人の叔母さんと近所の友人知人といった人たち(ヘレンと弟は寄宿学校に行くまでは、小学校には通わず家で教育を受けていたそうなので)。 表題に出てくる「ミス・カーター」もそのうちの一人で、一家と特に親しい資産家の若い女性なのですが、タイトルどおりいつもピンクの服を着ているためすぐ見分けがつくという訳です。人が大勢いるシーンの絵ではちょっとしたウォーリーをさがせ状態になって楽しい(笑)
このミス・カーターや母親たち四姉妹は社会の流行全般に敏感な人たちだったようで、最新モードのファッション研究に熱心なのはもちろんのこと、揃って婦人参政権運動のデモ行進に繰り出したら暴言を浴びせられ、あげく肩を小突かれたミス・カーターは卒倒してしまったり…というエピソードなどはいかにも時代を感じさせます。
そういったハプニングが大抵どこかしらで起きている街中の様子もユーモラスなのですが、私がもっと興味をひかれたのは当時の女性ならあんまり大っぴらにできなかったであろうようなプライベートな場面の絵です。
たとえば「ミス・カーターといつもいっしょに」中の、避暑に持っていく夏服をまとめて洗うため(現代人からするとずいぶん優雅な話ですが、ヘレン一家やカーターさんはじめ数人の知り合いたちは毎年初夏から九月いっぱい頃まで同じランカシャー州の有名な避暑地ブラックプールで過ごすのです。仕事のある男性陣は週末だけ合流)、女性たち総出で洗濯をするシーン。「お父さんご自慢の新しいせんたく機」というのは大きめのバスタブぐらいある木の槽で、それを二人がかりでジャブジャブかき混ぜるさまは実にくたびれそう。
これと他の巻にある、暖炉で熱した焼きごてで髪をカールするところ(煙が!)に限っては、つくづく現代に生きていてよかったと思わされる光景です…。
もちろん全体としては、これほど古き良き時代の英国を感じさせてくれる本もそう多くないと思いますが。そもそもこのシリーズを入手しようと思ったのも、ほぼ同じ頃に活躍したM・R・ジェイムズやアルジャーノン・ブラックウッドといった作家たちの英国怪談を読むようになってからというもの、その登場人物の大半を占める当時のアッパーミドル層の暮らしぶりが気になりだしたからでした。そういったビジュアルを知るには、その時代を扱った映画やドラマが一番手っ取り早いのかもしれませんけど、ふだん映像作品をあまり見ない私のような人間にとっては、やっぱり紙の本をゆっくり眺めるほうが落ち着けるんですよね。