4・5 東京・春・音楽祭 N響/フィッシャー 「タンホイザー」
2012.04.06 01:28|音楽鑑賞(主にオペラ)|
上野はお花見の人でいっぱいでしたが、開演間近に文化会館に入って空席の多さに驚いてしまいました。出演者のネームバリューはそこそこあると思うのに、オペラ、特にワーグナーでこんな入りの悪さは経験ありません。(みんな日曜に来るのかな?) だいぶ疲れてきたので以下手短な感想です。
実は演奏会形式のオペラ全曲というのは初めて。今回はステージの手前にオーケストラ、その奥の一段高くなったところにソリスト(出番にあわせて出入り)とコーラスという配置でした。
背景のスクリーンには場面に合わせた映像(演出で多少色合いが変わったりしますが、特に見ていてわずらわしいものではありません)が投影され、その上に字幕が出てきます。これは通常のオペラ公演の時よりずっと大きく、見やすいので助かりました。
これだとピットに入っているときよりもオケが自己主張し、歌手が表現に弱声を使ったとき、楽器の音がところどころかぶさって聞き取りにくくなるというデメリットも感じなくはなかったですが、(少なくとも私が座った三階の端から聞くと、)今回は声量のある歌手揃いだったおかげか、オケに負けっぱなしという人はいませんでした。
アダム・フィッシャーの指揮は緩急をはっきりつけ、聞かせどころでぐっと盛り上げ熱気たっぷりで、オケもそれによく応えていたと思います。ネット配信で聴いたばかりのモネ劇場のルサルカ、緊張感みなぎる音楽作りがすばらしかったので、今回一番楽しみにしていたのがフィッシャーだったんですが、期待を裏切らないできでした。
歌手で最大の発見はヴォルフラム役のマルクス・アイヒェ。癖のない美声で、「夕星の歌」なんかは端正すぎるくらいの歌い方ながら、エリーザベトやタンホイザーとのやりとりからは秘めた激情が伝わり、下手するとつまらなくなるこの役に生身の人間らしさを与えていました。
エリーザベトのペトラ・マリア・シュニッツァーは、抑えた表現で役柄にふさわしい品がありました。一方クラステーヴァ、真紅のドレスが似合うグラマーな人なんですが、ヴェーヌス役にはせめてもう少し、女神らしい余裕のようなものがほしかったかも。最初のあたりオケがだいぶ飛ばしていたせいもあってか、ちょっと間合いが取れずに叫び気味という感じでした。しかしヴェーヌスって歌うところも多くないし、ワーグナーのヒロインでは一番損な役じゃないかと思わずにはいられません。
ヘルマンのアイン・アンガーも特徴的な重々しい声で領主の貫禄十分。余談だけど、終わった後下に降りたら目の前に某外人大関がいらしてびっくりしたんですが、同じエストニア出身のアンガーが出ていた縁でしょうか?
題名役のグールドは、最後まで崩れず適度なリリックさもあるとても立派なタンホイザーでした。ただ、本当に贅沢な話なんですけれど、この人の役で今までビジュアル込みで見たトリスタンとタンホイザーと「影のない女」の皇帝がどうもほぼ同じイメージなんですよね。(後二つは演奏会形式かそれと大差ないみたいなものだったにしても。) ヘルデン・テノールにそれ以上求めるって酷なものでしょうか。音だけなら、ラジオで聴いたバイロイトのジークフリートはだんだんこなれてそれなりにユーモアも出せるようになっていた記憶があるんですが・・・。
合唱も大健闘。でもこれも贅沢な要求なんですが、やっぱり巡礼の合唱はソリスト陣のすぐ後ろからでなく、舞台の奥から聞こえてきてほしいです。あと一幕後半や二幕のアンサンブルでは、歌手がくっついて横並びだと各々の声がいくぶん聞き分けにくいなど、普通のステージ上演だったら・・・とたびたび思ったものでした。
実は演奏会形式のオペラ全曲というのは初めて。今回はステージの手前にオーケストラ、その奥の一段高くなったところにソリスト(出番にあわせて出入り)とコーラスという配置でした。
背景のスクリーンには場面に合わせた映像(演出で多少色合いが変わったりしますが、特に見ていてわずらわしいものではありません)が投影され、その上に字幕が出てきます。これは通常のオペラ公演の時よりずっと大きく、見やすいので助かりました。
これだとピットに入っているときよりもオケが自己主張し、歌手が表現に弱声を使ったとき、楽器の音がところどころかぶさって聞き取りにくくなるというデメリットも感じなくはなかったですが、(少なくとも私が座った三階の端から聞くと、)今回は声量のある歌手揃いだったおかげか、オケに負けっぱなしという人はいませんでした。
アダム・フィッシャーの指揮は緩急をはっきりつけ、聞かせどころでぐっと盛り上げ熱気たっぷりで、オケもそれによく応えていたと思います。ネット配信で聴いたばかりのモネ劇場のルサルカ、緊張感みなぎる音楽作りがすばらしかったので、今回一番楽しみにしていたのがフィッシャーだったんですが、期待を裏切らないできでした。
歌手で最大の発見はヴォルフラム役のマルクス・アイヒェ。癖のない美声で、「夕星の歌」なんかは端正すぎるくらいの歌い方ながら、エリーザベトやタンホイザーとのやりとりからは秘めた激情が伝わり、下手するとつまらなくなるこの役に生身の人間らしさを与えていました。
エリーザベトのペトラ・マリア・シュニッツァーは、抑えた表現で役柄にふさわしい品がありました。一方クラステーヴァ、真紅のドレスが似合うグラマーな人なんですが、ヴェーヌス役にはせめてもう少し、女神らしい余裕のようなものがほしかったかも。最初のあたりオケがだいぶ飛ばしていたせいもあってか、ちょっと間合いが取れずに叫び気味という感じでした。しかしヴェーヌスって歌うところも多くないし、ワーグナーのヒロインでは一番損な役じゃないかと思わずにはいられません。
ヘルマンのアイン・アンガーも特徴的な重々しい声で領主の貫禄十分。余談だけど、終わった後下に降りたら目の前に某外人大関がいらしてびっくりしたんですが、同じエストニア出身のアンガーが出ていた縁でしょうか?
題名役のグールドは、最後まで崩れず適度なリリックさもあるとても立派なタンホイザーでした。ただ、本当に贅沢な話なんですけれど、この人の役で今までビジュアル込みで見たトリスタンとタンホイザーと「影のない女」の皇帝がどうもほぼ同じイメージなんですよね。(後二つは演奏会形式かそれと大差ないみたいなものだったにしても。) ヘルデン・テノールにそれ以上求めるって酷なものでしょうか。音だけなら、ラジオで聴いたバイロイトのジークフリートはだんだんこなれてそれなりにユーモアも出せるようになっていた記憶があるんですが・・・。
合唱も大健闘。でもこれも贅沢な要求なんですが、やっぱり巡礼の合唱はソリスト陣のすぐ後ろからでなく、舞台の奥から聞こえてきてほしいです。あと一幕後半や二幕のアンサンブルでは、歌手がくっついて横並びだと各々の声がいくぶん聞き分けにくいなど、普通のステージ上演だったら・・・とたびたび思ったものでした。
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タグ:オペラ感想