バイロイト2012 パルジファル
2012.09.03 20:39|音楽鑑賞(主にオペラ)|
一週間前に放映されたのをやっと見終えました。2008年プレミエのこのプロダクション、近年のバイロイトでは出色の出来という評判だったので、プレミアムシアターでやると知って楽しみにしてたのです。
しかし最初に個人的感想を一言でまとめると、部分的に引き込まれる所はあったものの、そこまでの説得力は感じられずじまいだったかな~。いろいろ詰め込みすぎ、ゴチャゴチャし過ぎの感が拭えませんでした。
それにむろんこっちが無知なせいですが、二十世紀前半のドイツ史に絡めてバイロイトの変遷を描くというコンセプトもヨーロッパの人に比べすんなり入ってきません。(ただドイツのマスコミがこの演出を持ち上げる理由はなんとなく分かった気がしましたが) 去年のローエングリンの幕間にやっていたドキュメントでも見直しておけばよかったかも。
私が見たヘアハイムの演出というとこの間のクトゥルフもどきが出るルサルカの配信映像だけですが、両者に共通なのはとにかく舞台の情報量が多く、常に視覚面に意識を集中してなければすぐ置いてきぼりにされてしまいそうなところ。
(ちなみに「ルサルカ」とは装置・衣装も同じ製作チームなので、一幕での群集の振り付けや背面の鏡などあちこちによく似た特徴があります。ただ鏡は「ルサルカ」では街路セットに奥行きを出すためのだまし絵的な役割が強かったのに対して、今回は要所要所で指揮者や客席を映すのがなんだかあざとくて好きになれませんでしたが。)
どっちの作品でもアイデアが音楽と上手く融合したときの効果は抜群(今回なら聖杯城への場面転換、特に三幕のほうとか)なものの、この「パルジファル」では特に前半、大筋やキャラクターの設定をひねりすぎて収拾がつかなくなった部分が多すぎる印象です。
でもその一方で、逆にそういう本来の筋との矛盾や破綻を恐れず舞台に乗せてしまうのが逆にこの人の持ち味で面白さかなという気もします。私としては無難なだけで、何が起きるかという期待をことごとく裏切ってくれる演出ほど嬉しくないものはないので。
ただ聖杯の騎士たちが場面ごとに違う姿で登場してくるのは、この特殊な閉じられた集団がどう位置づけられているのかを曖昧にしてしまうという意味で疑問が残ります。特に冒頭、女性含めたブルジョワ階級の観光客たち?の中ではメイドさん姿のクンドリーが目立たず、彼女がモンサルヴァートの男社会では異質な存在だというのが見て取れなくなってしまいますし。
歌手陣は全体に地味目ながら堅実(ついでにP・ジョルダンの指揮も)でした。この役向きでないテノール寄りの軽い声質ながら病んだ表現の上手さでカバーしたアンフォルタスと、罰ゲームものの衣装で頑張ったクリングゾルは敢闘賞。
パルジファル役のフリッツは、せめてもうちょっと見た目と高音に英雄らしいオーラがあればと。グルネマンツ、ユンは今回声に艶が欠けて聞こえ、控えめな歌い方もあって時にはもっと音楽にそぐう高揚感を引き出してほしく感じましたが、安定感はあり健闘してました。
初めは分身的存在のパルジファルの母(演技のみの女優)に食われ気味だし、二幕でスポットライトが当たる段になっても、歌も演技もいまいち魅力的じゃないクンドリーが一番残念だったかも・・・。賛否両論あったようですが、この演出なら前任の藤村さんの柔らかい声質が似合っていたと思うしそちらで見てみたかったです。
さて来年はどうやら今年出た「さまよえるオランダ人」が映像になるようです。ゼンタがピエチョンカ(エクサンプロヴァンスでシェロー新演出のエレクトラに出るらしい)から新国のエリーザベトとエルザ、メルベートに交代する以外は今のところキャストに変更はありません。
しかし問題は写真で見る限り、ぜんぜん面白そうじゃない演出ってことですが・・・。
しかし最初に個人的感想を一言でまとめると、部分的に引き込まれる所はあったものの、そこまでの説得力は感じられずじまいだったかな~。いろいろ詰め込みすぎ、ゴチャゴチャし過ぎの感が拭えませんでした。
それにむろんこっちが無知なせいですが、二十世紀前半のドイツ史に絡めてバイロイトの変遷を描くというコンセプトもヨーロッパの人に比べすんなり入ってきません。(ただドイツのマスコミがこの演出を持ち上げる理由はなんとなく分かった気がしましたが) 去年のローエングリンの幕間にやっていたドキュメントでも見直しておけばよかったかも。
私が見たヘアハイムの演出というとこの間のクトゥルフもどきが出るルサルカの配信映像だけですが、両者に共通なのはとにかく舞台の情報量が多く、常に視覚面に意識を集中してなければすぐ置いてきぼりにされてしまいそうなところ。
(ちなみに「ルサルカ」とは装置・衣装も同じ製作チームなので、一幕での群集の振り付けや背面の鏡などあちこちによく似た特徴があります。ただ鏡は「ルサルカ」では街路セットに奥行きを出すためのだまし絵的な役割が強かったのに対して、今回は要所要所で指揮者や客席を映すのがなんだかあざとくて好きになれませんでしたが。)
どっちの作品でもアイデアが音楽と上手く融合したときの効果は抜群(今回なら聖杯城への場面転換、特に三幕のほうとか)なものの、この「パルジファル」では特に前半、大筋やキャラクターの設定をひねりすぎて収拾がつかなくなった部分が多すぎる印象です。
でもその一方で、逆にそういう本来の筋との矛盾や破綻を恐れず舞台に乗せてしまうのが逆にこの人の持ち味で面白さかなという気もします。私としては無難なだけで、何が起きるかという期待をことごとく裏切ってくれる演出ほど嬉しくないものはないので。
ただ聖杯の騎士たちが場面ごとに違う姿で登場してくるのは、この特殊な閉じられた集団がどう位置づけられているのかを曖昧にしてしまうという意味で疑問が残ります。特に冒頭、女性含めたブルジョワ階級の観光客たち?の中ではメイドさん姿のクンドリーが目立たず、彼女がモンサルヴァートの男社会では異質な存在だというのが見て取れなくなってしまいますし。
歌手陣は全体に地味目ながら堅実(ついでにP・ジョルダンの指揮も)でした。この役向きでないテノール寄りの軽い声質ながら病んだ表現の上手さでカバーしたアンフォルタスと、罰ゲームものの衣装で頑張ったクリングゾルは敢闘賞。
パルジファル役のフリッツは、せめてもうちょっと見た目と高音に英雄らしいオーラがあればと。グルネマンツ、ユンは今回声に艶が欠けて聞こえ、控えめな歌い方もあって時にはもっと音楽にそぐう高揚感を引き出してほしく感じましたが、安定感はあり健闘してました。
初めは分身的存在のパルジファルの母(演技のみの女優)に食われ気味だし、二幕でスポットライトが当たる段になっても、歌も演技もいまいち魅力的じゃないクンドリーが一番残念だったかも・・・。賛否両論あったようですが、この演出なら前任の藤村さんの柔らかい声質が似合っていたと思うしそちらで見てみたかったです。
さて来年はどうやら今年出た「さまよえるオランダ人」が映像になるようです。ゼンタがピエチョンカ(エクサンプロヴァンスでシェロー新演出のエレクトラに出るらしい)から新国のエリーザベトとエルザ、メルベートに交代する以外は今のところキャストに変更はありません。
しかし問題は写真で見る限り、ぜんぜん面白そうじゃない演出ってことですが・・・。
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