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オトフリート・プロイスラーの訃報

2013.02.22 22:45|怪奇幻想文学いろいろ
 ドイツの児童文学作家、オトフリート・プロイスラー氏が18日に89歳で亡くなられていたことを昨日の朝刊で知りました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

 プロイスラーの代表作「大どろぼうホッツェンプロッツ」シリーズと「小さい魔女」は、幼児向けのグリム童話のようなものを除けば、ミヒャエル・エンデの作品と並んで私が人生で最初に接したドイツ文学だったと記憶しています。
 
 エンデの「モモ」や「ジム・ボタン」がそれほど特定の国や地域性を感じさせない作風だったのに対し、深い森が主な舞台の「ホッツェンプロッツ」といいワルプルギスの魔女の夜会で始まる「小さい魔女」といい、今思えばプロイスラーの物語はドイツという国に対するイメージの原点だったかもしれません。「ホッツェンプロッツ」三部作は小学校中学年のころには学級文庫にも置いてあって、あまり本を読まない子でも一度は目を通したことがあるというくらいには人気でした。

 家にあった本もいつの間にか処分してほとんど忘れかけていたのを、昨年ふとしたきっかけで「ホッツェンプロッツ」のことを思い出して読み直してみました。大人になった今でもやっぱり面白く、それにつられて年末あたりから未読だった「クラバート」などプロイスラーの他の本を数点購入したばかりだったのです。

 プロイスラー作品はほとんどがドイツや出身地ボヘミア地方(現在はチェコ)の民話や伝説を題材にしていますが、驚いたのは「ホッツェンプロッツ」もドイツの伝統的人形芝居に基づくものだったということ。
 
 去年再読したころこちらのマッドハッターさんのブログの記事で教えていただいて初めて知ったのですが、とんがり帽子の道化人形「カスパー(ル)」が主人公の「カスパー・テアター」なる民衆劇が古くから存在しており、そこからプロイスラー流に組み立てられた話だったのですね。(コメディア・デラルテやパンチとジュディのドイツ語圏版みたいなものでしょうか。)相棒のゼッペルはじめ、泥棒(つまりホッツェンプロッツ)とお巡りさん、おばあさんといったほかの登場人物たちもみんな人形劇の定番キャラクターを元にしているようです。

 もともとの類型化された芝居の役柄に感情移入するのはちょっと難しいかもしれませんが(実際にそういうドイツの人形劇を見たことがないのではっきりは言えないけれど)、「ホッツェンプロッツ」のキャラたちは多少デフォルメされてはいてもみな血の通った生身の人間という感じで、それが小さな子供にも受ける最大の理由なんだろうと思います。こちらはもっと対象年齢が上ながら、ボヘミアの民話が下敷きという「クラバート」の主人公にしても然り。
 
 現代では古典を題材に創作をしようとすると、視点や解釈の目新しさがなければ芸術性を認められないような風潮がなきにしもあらずでしょう。しかしプロイスラーのように、歴史と本来の形を尊重しつつさらなる魅力を引き出すのも実は負けず劣らず高度な技法なのではないかと思ったものでした。

つい一月ほど前に買ったばかりのプロイスラーの作品集。

魂をはこぶ船―幽霊の13の話 (プロイスラーの昔話)魂をはこぶ船―幽霊の13の話 (プロイスラーの昔話)
(2004/01)
オトフリート プロイスラー

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地獄の使いをよぶ呪文―悪魔と魔女の13の話 (プロイスラーの昔話)地獄の使いをよぶ呪文―悪魔と魔女の13の話 (プロイスラーの昔話)
(2003/12)
オトフリート プロイスラー

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真夜中の鐘がなるとき―宝さがしの13の話 (プロイスラーの昔話)真夜中の鐘がなるとき―宝さがしの13の話 (プロイスラーの昔話)
(2003/11)
オトフリート プロイスラー

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 各地の民話(とりわけ「遠野物語」的な怪談系の)をテーマ別に編纂し、簡単な解説つきでまとめた三冊です。仕様からして低年齢層が対象という感じなので一冊ごとのボリュームは少ないですが、どれも見かけのわりになかなかの読み応え。プロイスラーが作品にしたのとは異なる「クラバート」伝説の一エピソード、それにこれもウェーバーのオペラとはまったく別の「魔弾」にまつわる話などもあっていい勉強になりました。

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テーマ:本の紹介
ジャンル:学問・文化・芸術

コメント

リンクありがとうございました

すっかりお礼コメントが遅くなってしまいましたが、リンク&コメントありがとうございます。
せっかくご紹介していただきながら、ホッツエンプロッツの紹介記事、たいしたこと書いてないので恥ずかしい限りではあります(汗)

プロイスラー氏の作品、私は殆ど読んでいないのですが、↑で最後に紹介されている三冊、おもしろそうですね。

ドイツのイメージ=森ってのは確かにあります。
ドイツの深い森に関しては最近↓ようなニュースを読みました。

うわさと社会:ドイツ・都市伝説の真相/2 「冷戦末期、西独の米軍基地に巨大なオオカミ男出現」
http://mainichi.jp/select/news/20130219dde007030019000c.html

現代ドイツ人も森に対して恐怖を感じるようですね。
日本人は…山かな?
サンカ等とも関係あるのかもしれません。

タニス・リーの短編に「狼の森」という作品があるのですが、「赤頭巾」を題材にした恐ろしい話でした。
舞台は明確に記述されていないながらフランスのようですが、ドイツなイメージでした。
↑でリンクしたニュースで思い出してしまったのですが^^

スレ違いですが、以前ご紹介していただいたナスのラザニア、今日作ってみましたよ。
本日ブログにそのことを書き、またeHollyさんのブログの該当記事もリンクさせていただきました。
お礼とご報告をさせていただきます。
ありがとうございました!

Re: リンクありがとうございました

昨日はコメント行き違いでしたね。そちらの返信コメも拝見しましたので、また近いうち書き込ませていただきますe-257

ナスラザニア、ほぼオリジナル通りのレシピで作られたみたいですがおいしく召し上がっていただけたようで何よりです!(なんて、私が考えた料理じゃありませんが。)
なんにせよこちらこそリンクありがとうございました。一人用のグラタン皿で小分けにして作るのも食べやすそうでいいですね。

プロイスラー氏の民話集は(私はいわゆるモダンホラーより、日本でいうと諸星大二郎みたいなこういう系統の話が好みなので…)、由来や時代背景まできっちり解説されているのが嬉しいです。一緒に買った「クラバート」のすぐ後に読んだのですが、特に二冊目の「地獄の使いを呼ぶ呪文」はその補完にもなりました。

確かにドイツの「森」は日本では「山」という言葉に置き換えられるかもしれませんね。山姥とか山彦なんてのもいますし。

 オオカミ男の記事、目撃談が単に「オオカミ」でなく「オオカミ男」になってるのが一番面白いところだと思います。オオカミ人間や人面犬みたいに中途半端に人間の半人半獣っていうのは、確かに単なる猛獣(こっちも怖いけど)とは別次元の不気味さですよね~。

「森から現れるピエロに警察出動」っていうのには最初笑っちゃいましたが、考えてみたらピエロもメイクのせいで「中途半端に人間」みたいな存在になるんでしょうか。しかしピエロ恐怖症なるものがそんなにメジャーだったとは初めて知りました。そういえば昔数人でそんなことを言い合ってた同級生がいたような・・・今思うとSキングの「IT」映画版でも見たのかな?

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