ホームズvsクトゥルフ教団のゲーム "Sherlock Holmes: The Awakened"
2017.12.31 04:27|怪奇幻想文学いろいろ|
今年もさぼっていたらまたも大晦日の更新になってしまいました。うちは喪中でお正月はなしですが、2018年もよろしくお願いいたします。
「虚ろなる十月の夜に」を読んだあと、ホームズ+クトゥルフのテーマ繋がりで二年前に一度プレイしたきりだったこのゲームが無性にやりたくなり、のべ一か月くらいかけてのんびり遊んでました。
"The Awakened"(=「目覚めさせられしもの」、すなわち海底での眠りから呼び覚まされようとするクトゥルフをさすと思われます)というタイトルの、シャーロック・ホームズと邪神教団の対決を描いたオリジナル・ストーリー。プレーヤーはホームズ(まれに相棒のワトスン)を操作し、行く先々に残された手掛かりをたどって背後に隠されたクトゥルフ復活の陰謀を阻止するべく奔走することになります。
Frogwaresという会社が出している一連のホームズ物シリーズの一作ですが、ドイルの原作からして怪奇小説成分が多いこともあり、名探偵ホームズの冒険にクトゥルフ神話要素が違和感なく組み込まれていてストーリー面での評価も高いようです。
オープニングはおなじみのベーカー街221Bから。例によって興味をひかれる事件がないと退屈中のホームズですが、気晴らしにと近所の本屋を覗きに出かけた帰り道で、こちらもすぐそばの屋敷に往診に来ていたワトスンに呼び止められます。
その家の召使であるマオリ族の若者が夜間に忽然と姿を消し、主人(ワトスンの患者)は英国に不慣れな彼が外で面倒を起こしはしまいかと気に病んでいるというのです。しかも立ち会いの警官によれば、最近ロンドンでは同様の外国人失踪事件が相次いでいるとのこと。
ホームズはさっそく消えた男が寝起きしていた庭の小屋を調べ、遺留品の分析から、彼が自分から逃げたのではなく、海運業に携わっている二人組の男に寝込みを襲われ連れ去られたことを突きとめます。
さらなる手がかりを求め、埠頭の倉庫街へと調査に向かうホームズとワトスン。聞き込みを重ねたすえに疑惑の人物が出入りしていると思しき倉庫へ忍びこむと、中には謎めいた血文字のメモが残された手帳と巨大な床の上げ戸が。その下に隠された地下通路を進み、突き当りの仕掛け扉を開くと、蛸のようなおぞましい姿の石像の前に惨殺死体の横たわる隠し部屋が姿を現しました。またそこには大勢の人間が、抵抗できないようアヘンを投与されて閉じ込められていた形跡もあったのです。
ベーカー街に戻ったホームズは、一連の行方不明者たちは倉庫の地下に一時監禁されたのち、荷箱に詰められ「船荷」として国外に運ばれたのではないかと推理。しかしあれほど大量のアヘンをどこから調達できたのかといぶかしんでいると、ワトスンが職業知識を生かし、規制の緩い医療用の名目で輸入されたものではないかと珍しく役に立つアドバイスをくれます。
現場に引き返して捜索すると、まさしくワトスンの見解通り「ブラック・エーデルワイス」というロゴの入った薬品ラベルが近くで見つかりました。その名を持つスイスの医療施設(※エーデルワイスはスイスの国花)がカルト教団と共謀して事件に関与しているという結論に達し、二人は英国を離れ大陸へと調査に乗り出します。
目指す「ブラック・エーデルワイス」はアルプスの山の中に建つ精神科のサナトリウムでした。ワトスンが医者の肩書を使って院長のガイギャックス博士に接触する一方、患者を装って病棟の内部に潜入を試みたホームズは...。
序盤のあらすじはざっとこんな感じ。ホームズとワトスンの探索はアルプス山中からさらにアメリカのニューオーリンズ、クライマックスとなる北海の孤島へと続き、神話にふさわしく世界規模のストーリーが展開します。とりわけホームズにとって因縁の地であるスイスの章では(ちなみに、私の記憶違いでなければこのゲームの出来事は1894年という設定だったはず)、おまけ的な要素とはいえちょっとした衝撃の事実が判明したりも。
このサナトリウムのステージがまた曲者で、監視人のいる場所で下手に動いて見つかると即ゲームオーバーになってしまい、何度やり直す羽目になったことか...(進行は好きなところで保存できるのでこまめにセーブしましょう)。普段クリック一つで移動可能なタイプのPCゲームしかやらないもので、私の操作勘がおそろしく悪いのも一因ではありますが。
(ただし購入したBigFishというサイトのレビューなど見ても、移動時の操作性に難ありなのは共通認識のよう。視点は一人称と三人称とで切り替えられますが、後者はどうにも使いづらいので探索するには一人称のほうが楽です。私がやるとホームズが酔っぱらいみたいな歩き方になっちゃうんですけど)
でもそんなトラップの存在も緊張感を高めるのに一役買ってはいるし、夜の埠頭、地下病棟、ジャングルの奥深い沼地といった不気味さ満点のロケーションは一昔前のグラフィックながら非常に良く作りこまれています。そこを自分の足で地道に調べてまわり、得られた情報から次の行動を考えるという、ちょっとしたクトゥルフ・バイ・ガスライト(ヴィクトリア朝舞台のクトゥルフTRPG)の探索者気分を味わえるのが一番のおすすめポイントかもしれません。
かなりのボリュームに加え、難易度は全体的に高めでやりごたえも十分。ただホームズを操作しても頭脳を共有できるわけではないので、今回は迷ったら即攻略を見る方針でいきました(笑) というのも前のプレイ時には操作に不慣れなのと自力で解くのにこだわったせいで時間がかかり過ぎ、ようやくクリアできた時には序盤の伏線をすっかり忘れていたという苦い思い出があったからですが、今度はストーリーに集中できた分事件の全体像がすんなり把握できて納得のエンドを迎えられました。
予告編
https://www.bigfishgames.com/games/2907/sherlock-holmes-the-awakened/?pc
私が購入したBig Fish Gamesのサイト (一時間の無料トライ可)
日本語サポートはされていませんが、ネットに有志の方による翻訳、また日本語での実況動画もあるのでそちらも参考にできます。なおグラが粗いおかげでリアル感が多少薄れているとはいえ、グロテスクなシーンが少なくないのでそういうのが苦手な方はご注意ください。
ホームズVS切り裂きジャックという続編もあるそうで、そちらもいずれプレイしてみたいとは思ってるんですが...。
「虚ろなる十月の夜に」を読んだあと、ホームズ+クトゥルフのテーマ繋がりで二年前に一度プレイしたきりだったこのゲームが無性にやりたくなり、のべ一か月くらいかけてのんびり遊んでました。
"The Awakened"(=「目覚めさせられしもの」、すなわち海底での眠りから呼び覚まされようとするクトゥルフをさすと思われます)というタイトルの、シャーロック・ホームズと邪神教団の対決を描いたオリジナル・ストーリー。プレーヤーはホームズ(まれに相棒のワトスン)を操作し、行く先々に残された手掛かりをたどって背後に隠されたクトゥルフ復活の陰謀を阻止するべく奔走することになります。
Frogwaresという会社が出している一連のホームズ物シリーズの一作ですが、ドイルの原作からして怪奇小説成分が多いこともあり、名探偵ホームズの冒険にクトゥルフ神話要素が違和感なく組み込まれていてストーリー面での評価も高いようです。
オープニングはおなじみのベーカー街221Bから。例によって興味をひかれる事件がないと退屈中のホームズですが、気晴らしにと近所の本屋を覗きに出かけた帰り道で、こちらもすぐそばの屋敷に往診に来ていたワトスンに呼び止められます。
その家の召使であるマオリ族の若者が夜間に忽然と姿を消し、主人(ワトスンの患者)は英国に不慣れな彼が外で面倒を起こしはしまいかと気に病んでいるというのです。しかも立ち会いの警官によれば、最近ロンドンでは同様の外国人失踪事件が相次いでいるとのこと。
ホームズはさっそく消えた男が寝起きしていた庭の小屋を調べ、遺留品の分析から、彼が自分から逃げたのではなく、海運業に携わっている二人組の男に寝込みを襲われ連れ去られたことを突きとめます。
さらなる手がかりを求め、埠頭の倉庫街へと調査に向かうホームズとワトスン。聞き込みを重ねたすえに疑惑の人物が出入りしていると思しき倉庫へ忍びこむと、中には謎めいた血文字のメモが残された手帳と巨大な床の上げ戸が。その下に隠された地下通路を進み、突き当りの仕掛け扉を開くと、蛸のようなおぞましい姿の石像の前に惨殺死体の横たわる隠し部屋が姿を現しました。またそこには大勢の人間が、抵抗できないようアヘンを投与されて閉じ込められていた形跡もあったのです。
ベーカー街に戻ったホームズは、一連の行方不明者たちは倉庫の地下に一時監禁されたのち、荷箱に詰められ「船荷」として国外に運ばれたのではないかと推理。しかしあれほど大量のアヘンをどこから調達できたのかといぶかしんでいると、ワトスンが職業知識を生かし、規制の緩い医療用の名目で輸入されたものではないかと
現場に引き返して捜索すると、まさしくワトスンの見解通り「ブラック・エーデルワイス」というロゴの入った薬品ラベルが近くで見つかりました。その名を持つスイスの医療施設(※エーデルワイスはスイスの国花)がカルト教団と共謀して事件に関与しているという結論に達し、二人は英国を離れ大陸へと調査に乗り出します。
目指す「ブラック・エーデルワイス」はアルプスの山の中に建つ精神科のサナトリウムでした。ワトスンが医者の肩書を使って院長のガイギャックス博士に接触する一方、患者を装って病棟の内部に潜入を試みたホームズは...。
序盤のあらすじはざっとこんな感じ。ホームズとワトスンの探索はアルプス山中からさらにアメリカのニューオーリンズ、クライマックスとなる北海の孤島へと続き、神話にふさわしく世界規模のストーリーが展開します。とりわけホームズにとって因縁の地であるスイスの章では(ちなみに、私の記憶違いでなければこのゲームの出来事は1894年という設定だったはず)、おまけ的な要素とはいえちょっとした衝撃の事実が判明したりも。
このサナトリウムのステージがまた曲者で、監視人のいる場所で下手に動いて見つかると即ゲームオーバーになってしまい、何度やり直す羽目になったことか...(進行は好きなところで保存できるのでこまめにセーブしましょう)。普段クリック一つで移動可能なタイプのPCゲームしかやらないもので、私の操作勘がおそろしく悪いのも一因ではありますが。
(ただし購入したBigFishというサイトのレビューなど見ても、移動時の操作性に難ありなのは共通認識のよう。視点は一人称と三人称とで切り替えられますが、後者はどうにも使いづらいので探索するには一人称のほうが楽です。私がやるとホームズが酔っぱらいみたいな歩き方になっちゃうんですけど)
でもそんなトラップの存在も緊張感を高めるのに一役買ってはいるし、夜の埠頭、地下病棟、ジャングルの奥深い沼地といった不気味さ満点のロケーションは一昔前のグラフィックながら非常に良く作りこまれています。そこを自分の足で地道に調べてまわり、得られた情報から次の行動を考えるという、ちょっとしたクトゥルフ・バイ・ガスライト(ヴィクトリア朝舞台のクトゥルフTRPG)の探索者気分を味わえるのが一番のおすすめポイントかもしれません。
かなりのボリュームに加え、難易度は全体的に高めでやりごたえも十分。ただホームズを操作しても頭脳を共有できるわけではないので、今回は迷ったら即攻略を見る方針でいきました(笑) というのも前のプレイ時には操作に不慣れなのと自力で解くのにこだわったせいで時間がかかり過ぎ、ようやくクリアできた時には序盤の伏線をすっかり忘れていたという苦い思い出があったからですが、今度はストーリーに集中できた分事件の全体像がすんなり把握できて納得のエンドを迎えられました。
予告編
https://www.bigfishgames.com/games/2907/sherlock-holmes-the-awakened/?pc
私が購入したBig Fish Gamesのサイト (一時間の無料トライ可)
日本語サポートはされていませんが、ネットに有志の方による翻訳、また日本語での実況動画もあるのでそちらも参考にできます。なおグラが粗いおかげでリアル感が多少薄れているとはいえ、グロテスクなシーンが少なくないのでそういうのが苦手な方はご注意ください。
ホームズVS切り裂きジャックという続編もあるそうで、そちらもいずれプレイしてみたいとは思ってるんですが...。
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