ヴァンス原作The Dying Earth RPG のキャラクターを作ってみた(続き)
2018.09.01 17:26|怪奇幻想文学いろいろ|
前回のダイイング・アースRPGキャラクター作成続き。暫定残り33点のクリエーション・ポイント(cp)を先に決めた主要技能以外の要素に割り振っていこうと思います。
―個別技能を選ぶ
個別技能(Indivisual Ability)はさまざまな専門的知識・技術をどれほど有しているかを示すもので、アルファベット順にAppraisal(鑑定)、Athletics(水泳・登攀・跳躍等運動全般)、Concealment(隠す/隠れる)、Craftsmanship(製作)、Driving(運転)、Engineering(機械操作・修理)等全部で二十二種類。(あまりファンタジー的でない〈運転〉や〈機械操作〉ですが、この世界には「終末期の赤い地球」で登場したようなかつての機械文明の名残りがいまだに存在している設定なので、それらの遺物を動かせる技能も含んでいるのかもしれません)
取得できる数に制限はなく、また一つも選ばなくても構いません。1ランクにつき1cp、11ランク以上は追加コストが必要になる点は取得必須の五技能と同じ。まあこの辺りはフレーバー感覚で、使用頻度が高くキャラの現時点イメージとも外れないようなものをとりあえずチョイス。10cp残すのを目安とし、合計23cpぶんとなるよう振り分けてみます。
Athletics〈運動〉:7 Etiquette〈作法〉:4 Perception〈感知〉:7 Wherewithal〈胆力〉:5 (暫定)
Wherewithalという単語は辞書を引くと「~をするのに必要な(特に金銭面での)手段」とありますが、説明では「苦痛や超自然的恐怖に直面しても決断力を保てること」となっているためあえて〈胆力〉と意訳しました。アメリカンスラングでは「やる気」という意味もあるらしいのでそちらのニュアンスに近い?要はSANチェックに失敗しづらいという、なかなか心強い能力です。
―〈抵抗力〉の種類と値を決める
このダイイング・アースRPGの特徴の一つが、能動的アビリティばかりでなく、自身に不利益をもたらしかねない各種の欲望をどれほど制御できるかを示すResistance(抵抗力)にもランクが設けられていること。いつ地球が滅びるかわからないという諦めと厭世感が支配するなか、人々が刹那的な快楽におぼれやすくなった退廃的世界観を強調するためでしょうが、シナリオの各所に〈抵抗力〉ロールをさし挟むことで緊張感を増せるでしょう(もちろんGMが適切なシチュエーションを考えなくてはなりませんが)。技能チェックと同様に処理し、成功すれば誘惑に打ち勝てたというわけです。
存在するのは1:Resist Arrogance(傲慢への抵抗力) 2:Resist Avarice(貪欲への抵抗力) 3:Resist Indolence(怠惰への抵抗力) 4:Resist Gourmandism(美食への抵抗力) 5:Resist Pettifoggery(些事への拘りへの抵抗力) 6:Resist Rakishness(放蕩への抵抗力) の六種。
個別技能と同じく、〈抵抗力〉は取得必須ではなく幾つ選ぶかも自由。ただし一種類の〈抵抗力〉に限り、1D6でランダムに選ぶならば、その欲と無縁であることを示す"total immunity"(完全免疫。該当する欲望に対してのみ〈抵抗力〉ロール免除。キャラシにはΩマークで表記)、自分の希望で選べば、1/2ボーナス(3cp)相当のランクを無償(所持cpから差し引く必要なし)で得られるとのこと。また、あえて〈抵抗力〉に一切cpを割り振らないのであれば、他の要素に費やすボーナス一回分(6cp)を新たに獲得できます。
あとキューゲル・レベルのキャラにはほぼ不可能そうながら、一つでも15ランク以上のアビリティを有する場合〈傲慢への抵抗力〉は0となり、ダイスでその番号の1の目が出た場合振り直しとなります。飛びぬけた才能にはどうしても驕りがつきまとうということなのでしょう。
ここは追加cpの対象にはならないようですが、やはりランダムチョイスの方が強いので今度もダイスで決めることにします。
出目は4:Resist Gourmandism〈美食への抵抗力〉、つまり飲食に対する欲やこだわりが皆無に近い人に。しかし少食だと大柄で敏捷という先のロール結果のイメージと結び付けづらいので、空腹さえ満たせれば何でもいい系の味音痴タイプ? 食べること自体に不自由はしなかったけれど美味しいものを味わえないような環境で育ったとか。
残すところ10cpとだいぶ厳しくなってきましたが、一種しか持たないのはなんとなくアンバランスなので、他に「貪欲」と「些事への拘り」への〈抵抗力〉も取っておきます(作成者個人の価値観を持ちこんで恐縮ですが、細かいことにうるさい人間がひじょーに苦手なもので)。 10の半分使ってそれぞれ2cpと3cpずつ。
よって〈美食への抵抗力〉:Ω 〈貪欲への抵抗力〉:2 〈些事への拘りへの抵抗力〉:3
―所持品を決める
前述のとおり、このゲームでは技能だけでなく所持品も一つにつき1cpで購入する方式。もっとも裸でうろつくPCがいてもまずいと、無償で2cpは身につけるものに使ってよいと記載されているので、実質服と履き物にはcpを支払わなくてよいと思われます。
というか「キューゲル・レベル」のキャラはスタート時の所持品を最低限にとどめねばならず、現金、魔術アイテムを含む貴重品、移動・運搬の手段となる動物または乗り物、さらには食糧の携行も禁止というなかなか容赦のない指定がされているのですが...
最終的にどちらの武器を選ぶかや身なりの詳細は、キャラのパーソナリティが固まってからでないと決めづらいためここでは保留しますが、衣服と靴のほか、武器(習熟している大弓かこん棒のどちらか) 、寝具、便利な道具を何か一つくらいは持っておきたいもの。これで3cpなので、最後の2cpで呪文を一つ買えばぴったり90です。
―取得する呪文を選ぶ
〈魔術〉が上限7ランクのキューゲル・レベルキャラが操れる魔法はかなり限られており、「単純」と「複雑」とに区分される呪文のうち「単純」カテゴリのものしか使えず、自身の〈魔術〉ランクの数値を超える数の呪文を持つことはできません。またD&Dに影響を与えたとされる、呪文の記憶システム(必要と思われる呪文を前もって脳内にインプットしておき、適切なタイミングで使う)もちゃんとありますが、こちらは呪文1つを覚えるのに〈魔術〉2ランクが必要となります。すなわち〈魔術〉3ランクのキャラであれば、「単純」呪文を開始時3つまで取得できますが、記憶して使いこなせる呪文はそのうち1つのみとなるわけです。
(それもそのはずで、「単純」カテゴリの呪文でも詠唱にはたっぷり20分かかり、それも適切な身ぶりを交えつつ一字一句正確に発音しなくてはならないというとんでもない代物。よって急場にその手順を省くため記憶システムがあると考えられます)
現在作成中のキャラには〈魔術〉を4ランク確保してありますが、cpは2しか残っていないので呪文は一つしか買えません。まあ切り札的な一本があれば、あとはキャントラップ(簡単な呪詛・祝福)で切り抜けるのも悪くないでしょう。
クイックスタートで選べる呪文は十種類のみ(ちなみに「終末期の赤い地球」の「魔術師マジリアン」の章で言及されるところによれば、この世界に存在する呪文はおよそ百種類とのこと)。「ベヒモスの大盤振る舞い」(ボリュームたっぷりの食事を出現させる)・「応急湿布」(ダメージ治癒)・「剛毅なる上腕の術」(筋力を一時的に増強)※訳は適当 などがありますが、ここは原作ファンとして「ミール城のトゥーリャン」にも登場する呪文、「ファンダールの透明マント」(Phandaal's Mantle of Stealth)を選んでみました。どんな状況でも姿を消せるのは便利ですし。あ、意味もなく悪いことには使いませんよ。
ですが、クイックルールの〈魔術〉の項を読み直していてちょっとした問題に気付きます。原作にも描写があるように、この世界の呪文は記録媒体とセットであり(D&Dと同じく記憶したとしても、一度発動すれば頭から抜け落ちて再度覚えなくてはならないため)、従ってプレイ開始時に呪文を購入したキャラクターは同時にそれらが記された魔導書をも所持することになるとあるのです。
え~、さっき持ち物を考える時本は計算に入れてなかったんですけど、となると道具は一つも持てない? なんか長旅の必需品は一揃い持たせてくれる他のTRPGが親切すぎるくらいに思えてきました(笑)
―プロフィールを作成し、名前をつける
これで一通りのcp配分は済んだわけですが、まだ一番楽しくかつ難しい最後の段階が残っています。すなわち今までに決めてきた技能の〈型〉をはじめとする特徴から、そのキャラクターの姿形、年齢、性格、背景等を導き出し、人物像に肉付けを施していくわけです。
もちろんPLにどんなキャラにしたいという明確な青写真があれば、(ボーナスを貰えないかわり)最初からふさわしい選択肢を選んでイメージ通りに仕上げるのもありでしょう。しかし今回のようにすべての選択肢をダイスでランダムに決めると、メインの性格指標となるであろう〈説得〉と〈拒絶〉において、「ひどく曖昧で複雑な話し方」が特徴ながらも、「純粋すぎて邪悪な誘惑を退け」てしまうという、微妙に掴みどころのない不思議くんが誕生するのはある程度避けられません。〈説得/雄弁〉の〈拒絶/鈍感〉みたいに、極端に矛盾した組み合わせでないだけまだましですが。
一方フィジカル面では、〈攻撃〉が「剛力」、〈防御〉が「眩惑」型という腕力と敏捷力双方に恵まれたタイプとなったので、これは体力的に今がピークの、ハイティーンぐらいの若者という感じです。その年頃なら超がつくピュアでもまだぎりぎり許されそうだし、隔絶された環境で本だけを相手に育ったことにして、回りくどくややこしい話し方はおもに人との会話より古めかしい書物から言語知識を得たからとしよう...と。あと〈魔術〉に関しては権力主義タイプという設定もあったか。
というわけで上記を踏まえた生い立ち。そこまで詳しくする必要はないということなので、かなり大雑把です。
かつては強大な魔術で近隣を支配していた旧家の末裔として生まれたが、父親は物心つく前に失踪、留守を預かるのに嫌気が差した母もほどなく幼い息子を置いて館を出てしまう。以来先祖たちが張りめぐらせた魔力のおかげでかろうじて荒廃を免れている広大な屋敷で、一族の遠縁にあたる無口な老乳母と二人きりで暮らし、庭で遊んでは古い書物に読みふける日々を送ってきた。
そこには貴重な魔導書も少なからず含まれていたものの、さほど魔術の心得がない乳母には代々の当主たちが受けたような本格的な修練は与えられない。少年が血筋の天分と読書によってほぼ無意識に身につけていた初歩知識のあとは、危険が迫ったときに有用と考えた不可視となる呪文を一つ教え込むのがやっとだった。
しかしその乳母も少年が十七歳を迎えて間もなく老衰で世を去り、亡骸を庭の一隅に埋葬した彼は、これまで書物でしか知らなかった広い世界を見に旅立とうと決意する。唯一操れる呪文が記された本、そして埃と錆だらけの武器庫でたった一つ使い物になりそうだった弓矢と簡単な寝具だけを携え、あてもなく地平線の彼方をさして歩きだしたのだった...
実のところ没落した旧家と荒れ果てた屋敷というのはドムバー家の城館(キューゲルに酷い目にあわされたダーウェ・コレムの屋敷)のイメージを拝借した部分が大きいんですが、その点はまあ大目に見てください。
最後に一番肝心な名前。実際にプレイするわけでもないし名無し君でいいかとも思ったんですが、ここは製作者的には世界観のためこだわるべき要素らしく、平々凡々な名前のキャラなんてGMはオープニングで瞬殺すべし的なことがわざわざ書いてあるほどなのです。ヴァンスのファンタジー作品に出てくる固有名詞って独特の語感だから、耳に馴染みのある西洋人名と違った響きの名前を一から考えつくのが難しいんですよね。
結局全く真面目に考えないまま、名前なんて飾りじゃん!ということでカザリヤンと命名(ひどい) マジリアンの兄弟っぽい。
ともかくこれで一通りのcp配分はすんだので、キャラシートを見直して割り振りcpの微調整をします。なんとなく〈防御〉から〈胆力〉に1ポイント移動させてそれぞれ9→8、5→6ランクに変更。これでちょうど48+24+5+3+10=90ポイントです。
また良家の生まれならと持たせてみた「作法」ですが、本に埋もれて育ったならPedantry(アカデミックな類いの学識)のほうがふさわしそうかなと、ランク値は同じまま〈作法〉→〈学識〉にしてみました。
ということでこちらが最終的なデータとなります(各技能・所持品の取得に必要なcpの値に関しては前回記事も合わせてご覧ください)
能力値
共通技能 〈説得/曖昧模糊〉:10 〈拒絶/純真無垢〉:11 〈攻撃/剛力〉:9 〈防御/眩惑〉:8 〈頑健〉:9 (合計48cp)
個別技能 〈運動〉:7 〈学識〉:4 〈感知〉:7 〈胆力〉:6 (合計24cp)
抵抗力値 〈美食への抵抗力〉:Ω 〈貪欲への抵抗力〉:2 〈些事への拘りへの抵抗力〉:3 (合計5cp)
所持品・服装 古びた絹服/革のブーツ(この二点はノーコスト)/ロングボウと矢/毛布/魔導書 (合計3cp)
〈魔術〉:4 型:力ずく 開始時所持呪文:「ファンダールの透明マント」 (合計10cp)
あとはキャラシに項目のある簡単なプロフィール。
名前:カザリヤン 性別:男 年齢:17
髪の色、長さ:色は黒。乳母を亡くしてからは伸び放題のため上着から取った紐で後ろに束ねている
容貌の特徴:眠そうな茶色い目のおっとりした顔立ちで、表情の変化に乏しい。服装と相まってどことなく浮世離れのした雰囲気(美形かどうかはご想像にお任せします)
目立った癖:ひげが生えかかっている顎をこする
身なり:旅立つまえ屋敷の衣裳部屋から持ち出した昔風の絹服一式。金糸織りの豪奢なものだったが、今となってはひどく古び色褪せてしまっている。足には衣服と不釣り合いな使いこまれた革製ブーツ。背中にはこれまた立派ながらも古びた弓と矢筒、本をくるんだ毛布を背負っている
性格・態度:
一見茫洋としているようでいて裏表のない素直な気性。基本的に他者には興味がなく、また感情の機微に聡いわけでもないが、本人に自分の心を偽るという観念が欠如しているせいか、不思議と相対した人間の隠し事を見抜くのに長けている。
初めて実際に触れる外の世界の何もかもが目新しく、次から次へと新しい発見を求めて一か所にとどまるのを嫌う。
口達者ではないものの、一旦会話に入りこむと考えたことを余すところなく語りつくそうとする。それも昔の書物で習い覚えた成句や婉曲法を駆使して長広舌を振るうので、相手はたいてい煙に巻かれ会話の主導権を譲ってしまう。
一言でいうと、世間ずれしていないぶん一般人の感覚からずれた人(そもそもダイイングアースに一般的感覚といえるものが存在するのなら)でしょうかね。 なお彼に食についへの関心がないのは独特の料理センスの持ち主だった乳母さんの手料理で育ったせいで、気の毒にも普通の食べ物が合わない味覚が形成されてしまったためです(笑)
ダイイング・アースRPG、簡易ルールといえども原作へのオマージュが随所に感じられるユニークで興味が尽きないゲーム性なので原作の未訳ぶん共々いつか日本語化してほしいものです。ロールプレイ重視、かつプレイヤーとGM、またはプレイヤー同士の駆け引きを推奨するような性格がなきにしもあらずなので、私のような初心者にはちょっとばかりハードル高いかもしれませんが。
どうやら私は無自覚のうちに背景などディテールに拘ってしまうほうらしく、最初は簡素にまとめるつもりだったのが予想以上に長くなってしまいました。まあここで書いたのは一応クイックスタート版ルールの手順を踏襲してはいても、あくまで私個人のキャラ作成方法にすぎないので、こんなものかという一例としてごらんください。というわけでここまで長々とお付き合いいただいて本当にありがとうございました。
―個別技能を選ぶ
個別技能(Indivisual Ability)はさまざまな専門的知識・技術をどれほど有しているかを示すもので、アルファベット順にAppraisal(鑑定)、Athletics(水泳・登攀・跳躍等運動全般)、Concealment(隠す/隠れる)、Craftsmanship(製作)、Driving(運転)、Engineering(機械操作・修理)等全部で二十二種類。(あまりファンタジー的でない〈運転〉や〈機械操作〉ですが、この世界には「終末期の赤い地球」で登場したようなかつての機械文明の名残りがいまだに存在している設定なので、それらの遺物を動かせる技能も含んでいるのかもしれません)
取得できる数に制限はなく、また一つも選ばなくても構いません。1ランクにつき1cp、11ランク以上は追加コストが必要になる点は取得必須の五技能と同じ。まあこの辺りはフレーバー感覚で、使用頻度が高くキャラの現時点イメージとも外れないようなものをとりあえずチョイス。10cp残すのを目安とし、合計23cpぶんとなるよう振り分けてみます。
Athletics〈運動〉:7 Etiquette〈作法〉:4 Perception〈感知〉:7 Wherewithal〈胆力〉:5 (暫定)
Wherewithalという単語は辞書を引くと「~をするのに必要な(特に金銭面での)手段」とありますが、説明では「苦痛や超自然的恐怖に直面しても決断力を保てること」となっているためあえて〈胆力〉と意訳しました。アメリカンスラングでは「やる気」という意味もあるらしいのでそちらのニュアンスに近い?要はSANチェックに失敗しづらいという、なかなか心強い能力です。
―〈抵抗力〉の種類と値を決める
このダイイング・アースRPGの特徴の一つが、能動的アビリティばかりでなく、自身に不利益をもたらしかねない各種の欲望をどれほど制御できるかを示すResistance(抵抗力)にもランクが設けられていること。いつ地球が滅びるかわからないという諦めと厭世感が支配するなか、人々が刹那的な快楽におぼれやすくなった退廃的世界観を強調するためでしょうが、シナリオの各所に〈抵抗力〉ロールをさし挟むことで緊張感を増せるでしょう(もちろんGMが適切なシチュエーションを考えなくてはなりませんが)。技能チェックと同様に処理し、成功すれば誘惑に打ち勝てたというわけです。
存在するのは1:Resist Arrogance(傲慢への抵抗力) 2:Resist Avarice(貪欲への抵抗力) 3:Resist Indolence(怠惰への抵抗力) 4:Resist Gourmandism(美食への抵抗力) 5:Resist Pettifoggery(些事への拘りへの抵抗力) 6:Resist Rakishness(放蕩への抵抗力) の六種。
個別技能と同じく、〈抵抗力〉は取得必須ではなく幾つ選ぶかも自由。ただし一種類の〈抵抗力〉に限り、1D6でランダムに選ぶならば、その欲と無縁であることを示す"total immunity"(完全免疫。該当する欲望に対してのみ〈抵抗力〉ロール免除。キャラシにはΩマークで表記)、自分の希望で選べば、1/2ボーナス(3cp)相当のランクを無償(所持cpから差し引く必要なし)で得られるとのこと。また、あえて〈抵抗力〉に一切cpを割り振らないのであれば、他の要素に費やすボーナス一回分(6cp)を新たに獲得できます。
あとキューゲル・レベルのキャラにはほぼ不可能そうながら、一つでも15ランク以上のアビリティを有する場合〈傲慢への抵抗力〉は0となり、ダイスでその番号の1の目が出た場合振り直しとなります。飛びぬけた才能にはどうしても驕りがつきまとうということなのでしょう。
ここは追加cpの対象にはならないようですが、やはりランダムチョイスの方が強いので今度もダイスで決めることにします。
出目は4:Resist Gourmandism〈美食への抵抗力〉、つまり飲食に対する欲やこだわりが皆無に近い人に。しかし少食だと大柄で敏捷という先のロール結果のイメージと結び付けづらいので、空腹さえ満たせれば何でもいい系の味音痴タイプ? 食べること自体に不自由はしなかったけれど美味しいものを味わえないような環境で育ったとか。
残すところ10cpとだいぶ厳しくなってきましたが、一種しか持たないのはなんとなくアンバランスなので、他に「貪欲」と「些事への拘り」への〈抵抗力〉も取っておきます(作成者個人の価値観を持ちこんで恐縮ですが、細かいことにうるさい人間がひじょーに苦手なもので)。 10の半分使ってそれぞれ2cpと3cpずつ。
よって〈美食への抵抗力〉:Ω 〈貪欲への抵抗力〉:2 〈些事への拘りへの抵抗力〉:3
―所持品を決める
前述のとおり、このゲームでは技能だけでなく所持品も一つにつき1cpで購入する方式。もっとも裸でうろつくPCがいてもまずいと、無償で2cpは身につけるものに使ってよいと記載されているので、実質服と履き物にはcpを支払わなくてよいと思われます。
というか「キューゲル・レベル」のキャラはスタート時の所持品を最低限にとどめねばならず、現金、魔術アイテムを含む貴重品、移動・運搬の手段となる動物または乗り物、さらには食糧の携行も禁止というなかなか容赦のない指定がされているのですが...
最終的にどちらの武器を選ぶかや身なりの詳細は、キャラのパーソナリティが固まってからでないと決めづらいためここでは保留しますが、衣服と靴のほか、武器(習熟している大弓かこん棒のどちらか) 、寝具、便利な道具を何か一つくらいは持っておきたいもの。これで3cpなので、最後の2cpで呪文を一つ買えばぴったり90です。
―取得する呪文を選ぶ
〈魔術〉が上限7ランクのキューゲル・レベルキャラが操れる魔法はかなり限られており、「単純」と「複雑」とに区分される呪文のうち「単純」カテゴリのものしか使えず、自身の〈魔術〉ランクの数値を超える数の呪文を持つことはできません。またD&Dに影響を与えたとされる、呪文の記憶システム(必要と思われる呪文を前もって脳内にインプットしておき、適切なタイミングで使う)もちゃんとありますが、こちらは呪文1つを覚えるのに〈魔術〉2ランクが必要となります。すなわち〈魔術〉3ランクのキャラであれば、「単純」呪文を開始時3つまで取得できますが、記憶して使いこなせる呪文はそのうち1つのみとなるわけです。
(それもそのはずで、「単純」カテゴリの呪文でも詠唱にはたっぷり20分かかり、それも適切な身ぶりを交えつつ一字一句正確に発音しなくてはならないというとんでもない代物。よって急場にその手順を省くため記憶システムがあると考えられます)
現在作成中のキャラには〈魔術〉を4ランク確保してありますが、cpは2しか残っていないので呪文は一つしか買えません。まあ切り札的な一本があれば、あとはキャントラップ(簡単な呪詛・祝福)で切り抜けるのも悪くないでしょう。
クイックスタートで選べる呪文は十種類のみ(ちなみに「終末期の赤い地球」の「魔術師マジリアン」の章で言及されるところによれば、この世界に存在する呪文はおよそ百種類とのこと)。「ベヒモスの大盤振る舞い」(ボリュームたっぷりの食事を出現させる)・「応急湿布」(ダメージ治癒)・「剛毅なる上腕の術」(筋力を一時的に増強)※訳は適当 などがありますが、ここは原作ファンとして「ミール城のトゥーリャン」にも登場する呪文、「ファンダールの透明マント」(Phandaal's Mantle of Stealth)を選んでみました。どんな状況でも姿を消せるのは便利ですし。あ、意味もなく悪いことには使いませんよ。
ですが、クイックルールの〈魔術〉の項を読み直していてちょっとした問題に気付きます。原作にも描写があるように、この世界の呪文は記録媒体とセットであり(D&Dと同じく記憶したとしても、一度発動すれば頭から抜け落ちて再度覚えなくてはならないため)、従ってプレイ開始時に呪文を購入したキャラクターは同時にそれらが記された魔導書をも所持することになるとあるのです。
え~、さっき持ち物を考える時本は計算に入れてなかったんですけど、となると道具は一つも持てない? なんか長旅の必需品は一揃い持たせてくれる他のTRPGが親切すぎるくらいに思えてきました(笑)
―プロフィールを作成し、名前をつける
これで一通りのcp配分は済んだわけですが、まだ一番楽しくかつ難しい最後の段階が残っています。すなわち今までに決めてきた技能の〈型〉をはじめとする特徴から、そのキャラクターの姿形、年齢、性格、背景等を導き出し、人物像に肉付けを施していくわけです。
もちろんPLにどんなキャラにしたいという明確な青写真があれば、(ボーナスを貰えないかわり)最初からふさわしい選択肢を選んでイメージ通りに仕上げるのもありでしょう。しかし今回のようにすべての選択肢をダイスでランダムに決めると、メインの性格指標となるであろう〈説得〉と〈拒絶〉において、「ひどく曖昧で複雑な話し方」が特徴ながらも、「純粋すぎて邪悪な誘惑を退け」てしまうという、微妙に掴みどころのない不思議くんが誕生するのはある程度避けられません。〈説得/雄弁〉の〈拒絶/鈍感〉みたいに、極端に矛盾した組み合わせでないだけまだましですが。
一方フィジカル面では、〈攻撃〉が「剛力」、〈防御〉が「眩惑」型という腕力と敏捷力双方に恵まれたタイプとなったので、これは体力的に今がピークの、ハイティーンぐらいの若者という感じです。その年頃なら超がつくピュアでもまだぎりぎり許されそうだし、隔絶された環境で本だけを相手に育ったことにして、回りくどくややこしい話し方はおもに人との会話より古めかしい書物から言語知識を得たからとしよう...と。あと〈魔術〉に関しては権力主義タイプという設定もあったか。
というわけで上記を踏まえた生い立ち。そこまで詳しくする必要はないということなので、かなり大雑把です。
かつては強大な魔術で近隣を支配していた旧家の末裔として生まれたが、父親は物心つく前に失踪、留守を預かるのに嫌気が差した母もほどなく幼い息子を置いて館を出てしまう。以来先祖たちが張りめぐらせた魔力のおかげでかろうじて荒廃を免れている広大な屋敷で、一族の遠縁にあたる無口な老乳母と二人きりで暮らし、庭で遊んでは古い書物に読みふける日々を送ってきた。
そこには貴重な魔導書も少なからず含まれていたものの、さほど魔術の心得がない乳母には代々の当主たちが受けたような本格的な修練は与えられない。少年が血筋の天分と読書によってほぼ無意識に身につけていた初歩知識のあとは、危険が迫ったときに有用と考えた不可視となる呪文を一つ教え込むのがやっとだった。
しかしその乳母も少年が十七歳を迎えて間もなく老衰で世を去り、亡骸を庭の一隅に埋葬した彼は、これまで書物でしか知らなかった広い世界を見に旅立とうと決意する。唯一操れる呪文が記された本、そして埃と錆だらけの武器庫でたった一つ使い物になりそうだった弓矢と簡単な寝具だけを携え、あてもなく地平線の彼方をさして歩きだしたのだった...
実のところ没落した旧家と荒れ果てた屋敷というのはドムバー家の城館(キューゲルに酷い目にあわされたダーウェ・コレムの屋敷)のイメージを拝借した部分が大きいんですが、その点はまあ大目に見てください。
最後に一番肝心な名前。実際にプレイするわけでもないし名無し君でいいかとも思ったんですが、ここは製作者的には世界観のためこだわるべき要素らしく、平々凡々な名前のキャラなんてGMはオープニングで瞬殺すべし的なことがわざわざ書いてあるほどなのです。ヴァンスのファンタジー作品に出てくる固有名詞って独特の語感だから、耳に馴染みのある西洋人名と違った響きの名前を一から考えつくのが難しいんですよね。
結局全く真面目に考えないまま、名前なんて飾りじゃん!ということでカザリヤンと命名(ひどい) マジリアンの兄弟っぽい。
ともかくこれで一通りのcp配分はすんだので、キャラシートを見直して割り振りcpの微調整をします。なんとなく〈防御〉から〈胆力〉に1ポイント移動させてそれぞれ9→8、5→6ランクに変更。これでちょうど48+24+5+3+10=90ポイントです。
また良家の生まれならと持たせてみた「作法」ですが、本に埋もれて育ったならPedantry(アカデミックな類いの学識)のほうがふさわしそうかなと、ランク値は同じまま〈作法〉→〈学識〉にしてみました。
ということでこちらが最終的なデータとなります(各技能・所持品の取得に必要なcpの値に関しては前回記事も合わせてご覧ください)
能力値
共通技能 〈説得/曖昧模糊〉:10 〈拒絶/純真無垢〉:11 〈攻撃/剛力〉:9 〈防御/眩惑〉:8 〈頑健〉:9 (合計48cp)
個別技能 〈運動〉:7 〈学識〉:4 〈感知〉:7 〈胆力〉:6 (合計24cp)
抵抗力値 〈美食への抵抗力〉:Ω 〈貪欲への抵抗力〉:2 〈些事への拘りへの抵抗力〉:3 (合計5cp)
所持品・服装 古びた絹服/革のブーツ(この二点はノーコスト)/ロングボウと矢/毛布/魔導書 (合計3cp)
〈魔術〉:4 型:力ずく 開始時所持呪文:「ファンダールの透明マント」 (合計10cp)
あとはキャラシに項目のある簡単なプロフィール。
名前:カザリヤン 性別:男 年齢:17
髪の色、長さ:色は黒。乳母を亡くしてからは伸び放題のため上着から取った紐で後ろに束ねている
容貌の特徴:眠そうな茶色い目のおっとりした顔立ちで、表情の変化に乏しい。服装と相まってどことなく浮世離れのした雰囲気(美形かどうかはご想像にお任せします)
目立った癖:ひげが生えかかっている顎をこする
身なり:旅立つまえ屋敷の衣裳部屋から持ち出した昔風の絹服一式。金糸織りの豪奢なものだったが、今となってはひどく古び色褪せてしまっている。足には衣服と不釣り合いな使いこまれた革製ブーツ。背中にはこれまた立派ながらも古びた弓と矢筒、本をくるんだ毛布を背負っている
性格・態度:
一見茫洋としているようでいて裏表のない素直な気性。基本的に他者には興味がなく、また感情の機微に聡いわけでもないが、本人に自分の心を偽るという観念が欠如しているせいか、不思議と相対した人間の隠し事を見抜くのに長けている。
初めて実際に触れる外の世界の何もかもが目新しく、次から次へと新しい発見を求めて一か所にとどまるのを嫌う。
口達者ではないものの、一旦会話に入りこむと考えたことを余すところなく語りつくそうとする。それも昔の書物で習い覚えた成句や婉曲法を駆使して長広舌を振るうので、相手はたいてい煙に巻かれ会話の主導権を譲ってしまう。
一言でいうと、世間ずれしていないぶん一般人の感覚からずれた人(そもそもダイイングアースに一般的感覚といえるものが存在するのなら)でしょうかね。 なお彼に食についへの関心がないのは独特の料理センスの持ち主だった乳母さんの手料理で育ったせいで、気の毒にも普通の食べ物が合わない味覚が形成されてしまったためです(笑)
ダイイング・アースRPG、簡易ルールといえども原作へのオマージュが随所に感じられるユニークで興味が尽きないゲーム性なので原作の未訳ぶん共々いつか日本語化してほしいものです。ロールプレイ重視、かつプレイヤーとGM、またはプレイヤー同士の駆け引きを推奨するような性格がなきにしもあらずなので、私のような初心者にはちょっとばかりハードル高いかもしれませんが。
どうやら私は無自覚のうちに背景などディテールに拘ってしまうほうらしく、最初は簡素にまとめるつもりだったのが予想以上に長くなってしまいました。まあここで書いたのは一応クイックスタート版ルールの手順を踏襲してはいても、あくまで私個人のキャラ作成方法にすぎないので、こんなものかという一例としてごらんください。というわけでここまで長々とお付き合いいただいて本当にありがとうございました。
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