W・H・ホジスン The Boats of the "Glen Carrig"(グレン・キャリッグ号のボート) No.1
2012.06.26 02:26|ホジスン|
2012/6/26追記:このあらすじ紹介は昨年の暮れから始めたものですが、完結したのを機に、途中に他カテゴリの記事が入らないよう最初からアップし直しました。なお、再掲にあたってところどころ筆を入れ直し、省略がすぎると感じた部分は加筆もしてあります。(特に序盤)
半月ほどまえに引いた風邪をこじらせて気管支炎になってしまい、まだ完全に治りきってません
。いちばんひどかった頃はなぜか座った姿勢でいると咳が出てきてしまうので、ほとんどパソコンも開かず横になって読書していたのですが、ちょうど買ってあったホジスンの「グレン・キャリッグ号のボート」が届いたので、いい機会だからとさっそく読み始めることにしました。
この話はホジスンのいわゆる「ボーダーランド三部作」のうち最初に世に出た作品。邦訳がある二作に加えて「幽霊海賊」もこの間読み終えたので、これでホジスンの長編四つは全作読破できるはずなんですが、またいつ途中で中断しないとも限りません。せっかくブログを始めたことだし、読んだ分のあらすじと簡単な感想をまとめて残しておこうと思います。「幽霊海賊」は導入のスローさに加え、章の途中で数か月間が空くことが二回もあったりで、また前に戻って読み返したりしていたらだいぶ時間がかかってしまったので。
基本自分のメモ用ですし、ここに来られるホジスン好きの方がそう多いとも思えませんけど、作者や作品名の検索で引っかかることでもあれば参考になさってください。もちろん完全にネタバレなので、自分で読んでみようという方はやめたほうがいいかも。
第一章 "The Land of Lonesomeness" あらすじ要約
6/26追記:なお、登場するキャラクターについてはこちらの別記事をご参照下さい。⇒「グレン・キャリッグ号のボート」登場人物一覧
序文の注釈によれば、物語は主人公のジョン・ウィンターストロー John Winterstrawという紳士が後年息子に語った若き日の体験談という形をとっています。時代は十八世紀前半、彼が客として乗っていた帆船グレン・キャリッグ号は南の海で座礁し、主人公と乗組員たちはかろうじて救命ボートで脱出したのでした。
話は彼ら難破船の船員たちが、二艘の救命ボートに分乗して海を漂っているところからはじまります。漂流六日目の朝、全員の指揮をとっているボースン(甲板長)が、ようやく遠くに陸らしきものを発見。一行は期待しつつ船を進めてゆくと、それは確かに陸地でしたが、一面の泥とぬかるみから異様な格好をした灌木らしきものが生えているだけの、見たこともないほど陰鬱な場所だったのです。
※ちなみに主人公はボースンとは別のボートに乗っており、そのボートの監督はジョシュという最年長の見習い士官?(自信がないのですが船長、航海士、機関長等の高級船員候補生のことでしょうか。原文では"the eldest 'prentice")です。船長や航海士たちの姿がないのは、遭難の際に命を落としたか離れ離れになってしまったのかもしれません。
しばらく漕ぐうちかなり広い川の河口が見つかりそこから内陸の方へ遡っていくことにしますが、両岸はどちらもぬらぬらした泥に覆われていて、上陸できるような場所は一切見当たりません。
一マイルほど漕ぎ登った付近で、ボートは初めて海上から見えた植物が茂っているのに遭遇しました。近くで観察すると、それはなんとも不健康な印象を与える矮性の潅木で、地面に垂れ下がった細く長い枝には、キャベツによく似た丸い塊のようなものがついているという奇怪な姿。
あたりを見回してもその妙な木々以外に一切生命の気配はなく、そのうえ尋常でない静けさに支配されているこの土地には何とも言えない不気味さが漂っていました。その思いは船員一同にも共通らしく、皆不自然なまでに押し黙っているのでした。
日暮れまで漕ぎつづけ、海が見えなくなる所までさかのぼってもまだ固い地面は見つからず、結局水上で夜を明かすことに。一行はボートを停泊させ、少なくなってきている食糧の蓄えから乏しい夕食が配られました。
そのとき今まで死んだように静まり返っていた陸地の奥から、ふいに低いすすり泣きのような声が響きわたったのです。正体不明の泣き声はあちこちから聞こえたり止んだりを繰り返し、皆恐怖におののきます。一人の男は緊張の糸が切れたような笑い声をあげるも、すぐボースンに静止されました。主人公の隣にいたジョージという少年が何の音だろうと話しかけてきますが、もちろん答えようもありません。
やがていったん声は止みましたが、すぐまた今度は飢えたけものの咆哮に似た、なんとも言いようがなく不気味な音が替わって響いてきました。しかもその遠吠えは、次第にこちらに近づいてくる気配さえ・・・。
とはいえ、闇の中ではどこにも逃げ場はなく、船員たちはボートを岸から離して河の中央に寄せ、震えながら夜を過ごすほかありませんでした。しかし夜明け近くになると、ふたたび死んだような静寂が戻ってきたのです。
わずかな朝食を済ませ、一行は警戒しながら再びオールを取って上流へと向かいます。しかし昼になっても、両岸に見当たるものといったら泥と不気味な灌木ばかり。さらに悪いことに、沈んだ船から持ち出した分の食料はもう底をつきかけていました。
* * * * * *
※2012・2/29追記:最初に買ったテキストがやや不完全で章割りもおかしいものだったので、新しいものを買いなおして修正しておきました。ついでに序文で触れられていた設定を加筆し、読みにくいと感じた部分もところどころ直してあります。以下順次同じようにしていく予定です。
半月ほどまえに引いた風邪をこじらせて気管支炎になってしまい、まだ完全に治りきってません

この話はホジスンのいわゆる「ボーダーランド三部作」のうち最初に世に出た作品。邦訳がある二作に加えて「幽霊海賊」もこの間読み終えたので、これでホジスンの長編四つは全作読破できるはずなんですが、またいつ途中で中断しないとも限りません。せっかくブログを始めたことだし、読んだ分のあらすじと簡単な感想をまとめて残しておこうと思います。「幽霊海賊」は導入のスローさに加え、章の途中で数か月間が空くことが二回もあったりで、また前に戻って読み返したりしていたらだいぶ時間がかかってしまったので。
基本自分のメモ用ですし、ここに来られるホジスン好きの方がそう多いとも思えませんけど、作者や作品名の検索で引っかかることでもあれば参考になさってください。もちろん完全にネタバレなので、自分で読んでみようという方はやめたほうがいいかも。
第一章 "The Land of Lonesomeness" あらすじ要約
6/26追記:なお、登場するキャラクターについてはこちらの別記事をご参照下さい。⇒「グレン・キャリッグ号のボート」登場人物一覧
序文の注釈によれば、物語は主人公のジョン・ウィンターストロー John Winterstrawという紳士が後年息子に語った若き日の体験談という形をとっています。時代は十八世紀前半、彼が客として乗っていた帆船グレン・キャリッグ号は南の海で座礁し、主人公と乗組員たちはかろうじて救命ボートで脱出したのでした。
話は彼ら難破船の船員たちが、二艘の救命ボートに分乗して海を漂っているところからはじまります。漂流六日目の朝、全員の指揮をとっているボースン(甲板長)が、ようやく遠くに陸らしきものを発見。一行は期待しつつ船を進めてゆくと、それは確かに陸地でしたが、一面の泥とぬかるみから異様な格好をした灌木らしきものが生えているだけの、見たこともないほど陰鬱な場所だったのです。
※ちなみに主人公はボースンとは別のボートに乗っており、そのボートの監督はジョシュという最年長の見習い士官?(自信がないのですが船長、航海士、機関長等の高級船員候補生のことでしょうか。原文では"the eldest 'prentice")です。船長や航海士たちの姿がないのは、遭難の際に命を落としたか離れ離れになってしまったのかもしれません。
しばらく漕ぐうちかなり広い川の河口が見つかりそこから内陸の方へ遡っていくことにしますが、両岸はどちらもぬらぬらした泥に覆われていて、上陸できるような場所は一切見当たりません。
一マイルほど漕ぎ登った付近で、ボートは初めて海上から見えた植物が茂っているのに遭遇しました。近くで観察すると、それはなんとも不健康な印象を与える矮性の潅木で、地面に垂れ下がった細く長い枝には、キャベツによく似た丸い塊のようなものがついているという奇怪な姿。
あたりを見回してもその妙な木々以外に一切生命の気配はなく、そのうえ尋常でない静けさに支配されているこの土地には何とも言えない不気味さが漂っていました。その思いは船員一同にも共通らしく、皆不自然なまでに押し黙っているのでした。
日暮れまで漕ぎつづけ、海が見えなくなる所までさかのぼってもまだ固い地面は見つからず、結局水上で夜を明かすことに。一行はボートを停泊させ、少なくなってきている食糧の蓄えから乏しい夕食が配られました。
そのとき今まで死んだように静まり返っていた陸地の奥から、ふいに低いすすり泣きのような声が響きわたったのです。正体不明の泣き声はあちこちから聞こえたり止んだりを繰り返し、皆恐怖におののきます。一人の男は緊張の糸が切れたような笑い声をあげるも、すぐボースンに静止されました。主人公の隣にいたジョージという少年が何の音だろうと話しかけてきますが、もちろん答えようもありません。
やがていったん声は止みましたが、すぐまた今度は飢えたけものの咆哮に似た、なんとも言いようがなく不気味な音が替わって響いてきました。しかもその遠吠えは、次第にこちらに近づいてくる気配さえ・・・。
とはいえ、闇の中ではどこにも逃げ場はなく、船員たちはボートを岸から離して河の中央に寄せ、震えながら夜を過ごすほかありませんでした。しかし夜明け近くになると、ふたたび死んだような静寂が戻ってきたのです。
わずかな朝食を済ませ、一行は警戒しながら再びオールを取って上流へと向かいます。しかし昼になっても、両岸に見当たるものといったら泥と不気味な灌木ばかり。さらに悪いことに、沈んだ船から持ち出した分の食料はもう底をつきかけていました。
* * * * * *
※2012・2/29追記:最初に買ったテキストがやや不完全で章割りもおかしいものだったので、新しいものを買いなおして修正しておきました。ついでに序文で触れられていた設定を加筆し、読みにくいと感じた部分もところどころ直してあります。以下順次同じようにしていく予定です。
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